エミール・ガレの素晴らしいガラス器を中心に紹介
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エミール・ガレ、ドーム、ルネ・ラリックなどの優れた工房で作られたアール・ヌーヴォー(フランス語で「新しい芸術」の意味)時代のガラス器を中心に掲載してありました。
本書の中心テーマとも言えるガレの作品の愛好家は日本でも多く、独特の文様とフォルム、色使いと技術、花鳥風月と浮世絵など、フランス人でありながら東洋芸術への親近性を感じるからこそ愛されてきたのだと思っています。
20ページにあるガレ「蜻蛉文脚付杯」の特徴のある虫をあしらったデザインは、好き嫌いは別にしてガレの魅力を象徴するような不思議なモティーフでしょう。花の都・芸術の都パリで作られた華やかなガラス器は、ベル・エポックの大輪の花のような存在です。
18ページのガレの代表作「ひとよ茸ランプ」には、自然の形態における成長過程の中に、生と死の輪廻の思いがモティーフに込められています。白血病を発症したガレの気持ちと輪廻の思想とが関係していました。幻想的ともいえる色彩とテーマ、このはかなさが日本人の死生観につながり、多くの愛好家の目を楽しませてきたのだと感じました。
その他、1990年ごろの様々な芸術家によって生み出されたシャンデリア、テーブル、椅子、置時計、飾り棚などの家具、グランド・ピアノ、なども多く掲載してあり、多方面からこの時代の芸術の特徴を捉えようとしています。
ジャポニスムとの親和性や日本美術資料などに関する紹介文も学術的な価値の高いもので、読み物も充実していました。カラーの写真を眺めているだけでうっとりとするような作品ばかりでしたね。