バーンスタインの爆演
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若い頃、LPで何度も聴いた録音である。出だしの異様にゆったりとしたテンポ、第3楽章のオケの爆発。
もちろん、ワイゼンベルクの硬質なピアノの音も美しいのだが、バーンスタインのオケが素晴らしい。
スピーカーがバンバン鳴るのである。それが快い。通常、この協奏曲では、オケは陰に回って、ということが多いが、このCDはこの曲における、オケの重要さを再認識させてくれる。CD化されて、直ぐに買ったが、音がくぐもっていて、似ても似つかない演奏になってしまっていた。それが再度CD化(24bitマスタリング)でLP当時の「迫力」が甦ったのは喜びに耐えない。出来れば、カラヤンでなく、このコンビで第2番も録音して欲しかった。
もっともロマンティックな3番
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このワイセンベルク/バーンスタイン盤の出だしを聴いて感じたのは、「重い!」そして「遅い!」と言う事。
どうやら、この曲の最遅盤らしいと聞きましたが、さもありなんです。
でも、彼がカラヤンと録音したラフマニノフの2番も聴いていたので、僕自身それほど違和感はありませんでした。
ここで感じた遅さは、後年のバーンスタインの影響とも取れますが、もともと2番も遅いので、そうではないと思います。
この楽曲の特徴は、やはり超絶な技巧をどう見せ付けるかだと、僕は思っていました。
しかし、実際この盤を聴いてその考えを改めました。
カラヤンとの2番と比べても、音のバランスが良い。
そして、ワイセンベルクとバーンスタインが奏でるこの曲は、何ともロマンティックであります。
とにかくメロディーの良さが際立っており、テンポの揺れも僕には心地よく感じます。曲自体が極上である事がよ〜く分ります。
第1楽章のカデンツァに入った途端の、ワイセンベルクの暴走ぶりや、第2楽章の規模の大きさ。
そして最後、第3楽章の再現部からコーダの流れ!
もう気持ちが良すぎます!
この演奏は、僕がラフマニノフにのめり込む切っ掛けになりました。
それほど、魅力的な演奏です。
ワイセンベルクの録音の中でも傑出した出来
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カラヤンとの優美な第2番を録音した7年後の1979年に、バーンスタインと協演したものです。
かなりゆったりとしたテンポでの第一楽章が始まると、
ワイセンベルク独特の重金属を想わせるような“ゴリゴリ感”のある硬質なピアノの音色がそれに続きます。
バーンスタインが取り持つテンポは終始遅めですが、
技巧派のワイセンベルクがしびれを切らしたかの様に突如として疾走する部分が所々目立ちます。
ラフマニノフ自身が感服したホロヴィッツの演奏に比較すると
この演奏はやや異色に聴こえるかもしれません。
純粋に音楽のみで判断すれば、個人的にはホロヴィッツの方が“妖艶”に感じられます。
録音上オケの各パートの音の分離がかなり鮮明なので、
バーンスタインがオケに何を要求していたのかがよくわかり、
全体的にはとても雄大できれいにまとまっています。
数あるワイセンベルクの録音の中でも傑出した出来でしょう。
最も怪しげなラフマニノフ !
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バーンスタインは同性愛者だったので、協奏曲の録音では必ず男性の奏者を指名するのが常であった。ワイセンベルクという人畜無害なピアニストを相手に選んだ彼は、このラフマニノフをマーラーを指揮する時と全く同じアプローチで、自己の感情を赤裸々なまでに吐露し、音楽の中に自己を強烈なまでに埋没させてゆく。主導権は完全にバーンスタインが握っており、まるで「ボスは俺だぜ」と言わんばかりだが、それは曲に対してやや冷ややかな距離を置き、よそよそしい演奏に終始することの多いワイセンベルクの心をも動かし、二人の競演は濃厚な化学反応を起こしながら盛り上がってゆく。
第三楽章の中盤、バーンスタインはゆったりとしたテンポでしっとりとオーケストラに歌わせマーラーもかくやと思わせるが、やがて彼の暴走はもはや誰にも止めることができなくなり、クライマックスへ向かって一直線に突き進む。「俺といっしょに上りつめようぜ、ベイビー」という彼の声が聞こえそうなぐらい怪しげな指揮でワイセンベルクを誘惑し続け、ワイセンベルクのピアノは明らかに冷静さを見失う寸前まで追い詰められてゆく。やがて二人はいつ果てるともなく延々と続く絶頂に達するカタルシスの中にまどろむのであった……。
ここまでくると、音楽というよりは何か見てはいけないものを見てしまった怪しげなものがあり、聴いている方が変な気持ちになり幻惑されてしまう。この演奏は数あるラフマニノフの中でも最もスキャンダラスな雰囲気に満ち、ワイセンベルクのピアノが珍しく高揚を見せるものの、良くも悪くもバーンスタインの体臭がぷんぷん漂う、しかし極めて魅力的な異色の名盤と言えるだろう。
癒される演奏
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非常にゆっくりとしたテンポと柔らかなタッチ、3番の演奏としては異色かもしれない。
私はこの曲はホロヴィッツ&オーマンディ(1978)の演奏がベストと思っているが、厳しく
張り詰めた緊張感で聞く者も一瞬も気の抜けないホロビッツの演奏とある意味対極に
あるワイゼンベルクの演奏には包まれる安心感と優しさが漂う。聞き慣れた3番であるはず
なのに新鮮な衝撃を感じる好演である。しかし、第1楽章のカデンツァは何であんなに
爆走(^^ゞしているのだろう。違和感は否めない。