ホーキンスの代表的傑作集
★★★★★
太くたくましい音で、ごりごりバリバリうねるように吹きまくるホーキンスだが、意外やヘンダーソン楽団に在籍初期の20年代は、ボキボキと妙なアクセントのついた吹き方をしていた。ちなみに、この頃ホーキンスに「ジャズ」を教えたのはサッチモである。
ここに収められているホーキンスの演奏は、欧州滞在からアメリカに戻って、いきなり放った傑作「ボディ・アンド・ソウル」(スウィング末期の録音)に始まり、ビバップの全盛時代までをカバーする。
ホーキンスとしても、もっとも充実していた全盛期に当たり、また、素晴らしい共演者にも恵まれ、自信に満ちあふれたプレーの連続が楽しめる。ただし、この頃の彼は時流に流されっぱなしで、バップに理解を示したのはともかく、モダン・ジャズをやろうと必死にもがいていた。結局ホーキンスのイディオムはどこまで行ってもモダンにはならなかったが、若き俊英たちを集めての力強い吹奏は、時代を超越した感動や興奮をもたらしてくれた。
CD-1の22.はオスカー・ペティフォードの手に汗握るベース・ソロで有名な作品。CD-2の7.~9.は、史上初めてレコードに吹き込まれたバップ演奏、などといわれているが、ガレスピー、ローチの名前がクレジットされているものの、内容はスウィング・ジャズである。CD-3の19.~22.では名手デンジル・ベストが聴けるほか、若き日のセロニアス・モンクに注目したい。23.及びCD-4の20.は有名な無伴奏ソロである。
モンクの「モンクス・ミュージック」や自身の「ハイ・アンド・マイティ・ホーク」で、モダン・ファンにも親しまれているかもしれないが、ホーキンスがもっとも輝いていた時期の傑作集なら、このボックスにとどめを刺す。