他国人の理解に大きな視野を与えてくれる。
★★★★★
中国に限らず他国や他国人のことを理解するには、その国の歴史や文化背景に
ついてもそれなりに知識が必要といえる。私たちは知らず知らずのにうちに
欧米的資本主義的思考方法が絶対と思い込んでしまう節がある。
そんな当たり前のことに小室氏の本を読んで改めて気づかされた。
特に中国人に対しては自分たちの尺度で相手の行動を推し量り、相手の事情を
考えず、ビジネス思考一辺倒で判断していた自分であったことを恥ずかしくさえ
思う。中国人が信用できるか否かの問題で無く道徳の根本の前提が違うのだ。
小室さんの中国理解を基本に
★★★★★
小室さんの解釈では、中国人と日本人の人間に関する考え方の違いは、相手に対する「線引き」であるということだろうか。中国人は線の内側の人に対しては「論語」の世界で、外側の人に対しては「韓非子」であるらしい。それに対して、日本人は建前の上では「論語」の説く道徳的な人物像を理想とし、普遍妥当性を追求する。
この方程式を実際の付き合いに持ち込むと、中国人と日本人では上手に付き合うことは、なかなか難しいのは当然の解として導かれるだろう。
ここで僕が思うのは、だからといって中国人は悪辣だとか、日本人は脇の甘いお人好しだとか、ステレオタイプな考えを持ってしまったのでは、安直な日中論となりさがってしまう。実際に岩波文庫などで「論語」「韓非子」などを実際に読み込んでみることをオススメします。けっして性善説VS性悪説といった人間理解ではないことがわかります。
むしろ「韓非子」的な世界観を持たざるを得なかった、中国民族の悲哀のようなものが見えてくるかも知れません。「韓非子」の描く世界は、「信賞必罰」とルールの硬直的な適用。人に対して情や幅を持たせない。その世界に憩いはありません。万人の万人に対する闘争の世界なのです。
世界は日本ほど甘くはない!
★★★★★
日本がいかに豊で恵まれているかを知る上でとても役に立つ本。これほど中国の事が面白くかつ正確に分かる本は他にない。オマケに歴史にまで詳しくなるから超・お得だ!! 「何でそうなるのか」がキチンと書かれてある。別に難しく書いてあるわけでもない。世の中にはワザと難しく書いてあるのではないかと思いたくなるものが多い中、これはそうではない。実に親切な本だ。著者の心遣いが有り難い。物事がちゃんと筋道立てて解説してある。詳しい事が分かりやすく楽しく説明してあるからとてもとても役に立つ(子供にも分かりやすいはずだ)。更に更に宗教観まで説明されてあるから日本人と中国人の相違、モノの考え方の違いまでよく分かる。「どうして違うのか」がよく理解できる。これを読めば「なるほど、だからそうなるのか」と納得できるはず。興味深い事が色々書かれてあります。単にエリートぶった人が自己満足で知識をブチ撒けているのではなく、万人が興味を引くような書き方になってるからとても親切。色々な手引書になるはずです。どんな人が書いた中国に関する解説書より役に立つ。
最良の指南書
★★★★★
中国について論じるのに中国の古典を駆使して分かり易く解説し、しかも、理知的な掘り下げ方を駆使している点で、非常に優れた説得力を発揮している。縦と横を貫く宗族とパンという構造について、博学な著者が解説している中国社会のシステムは見事であり、それによって中国人とはいかなる者かが明白になる。それにしても赤穂四十七士が財産横領をしていたとは、確かに著者にしか指摘できない大発見であり、それを読んで目からウロコガ落ちたと言う印象を強く持った。
中国理解の最良のテキスト
★★★★★
度重なる中国高官の高圧的な発言を聞くにつけ,中国人と日本人は見掛けは似ているのに,なぜこれほど国民性が違うのか?と疑問を持つ人も多いだろう.見掛けが似ているのだから遺伝子も似ているだろうに,なぜこれほど違うのか?
謎を解く鍵は歴史にある.稀代の天才,小室直樹がこの問題に,中国古典を紐解きながら鋭く切り込んでゆくのが本書である.特に,『史記』の「刺客列伝」聶政を例に引き,中国人の幇に対する概念が,命よりも重いことを論証してゆく下りは,圧巻だ.聶政は単に自分を信じて礼を尽くしてくれたというだけで,自分の命を投げ出して刺客としての使命を全うする.逆に,単なる知り合い程度では,彼らの倫理は適用されない.騙そうが,殺そうが,痛痒は感じない.全ての人間をなるべく平等に扱おうとする日本人とのなんと言う違いだろう.
本書には,中国古典や人物の引用が豊富だが,それぞれに丁寧な解説がついているので,中国史のサブテキストとして読んでも楽しめる.内容は非常に濃いのに,小室氏の軽妙な語り口に思わず読み出したら止まらない.まさに,天才小室直樹の面目躍如たる傑作だ.