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ギリシャ危機の真実 ルポ「破綻」国家を行く (Mainichi Business Books)

価格: ¥1,000
カテゴリ: 単行本(ソフトカバー)
ブランド: 毎日新聞社
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新聞記者が足で稼いで書いた 「ギリシアからみたギリシア危機」レポート ★★★★☆
 特派員としてローマに駐在する毎日新聞の記者が、足で稼いで書いた 「ギリシアからみたギリシア危機」レポートである。日々のマスコミ報道では知りようのない「ギリシアのいま」を伝えてくれるものだ。
 
 「ユーロ危機」の引き金となった「ギリシア危機」。一時期に比べたら「日本はギリシアになっていいのか!」というトンチンカンな叫びは沈静化したが、そもそも日本とギリシアはいっけん似たような地政学的ポジションにはあるものの、全く異なる歴史と文化をもつ国と国民であることが本書では確認される。
 一言でいってしまえば、現代ギリシアは、アングラ経済の発達した、いまだ近代化されていない「前近代社会」なのである。政治家が世襲される点は似ていなくもないが、すでに近代を通過し、「後近代」に入っている日本とは根本的に違う国なのだ。なんせ、統計データがまったくあてにならないのがギリシアである。

 経済的にみれば、民間需要に乏しく、公的支出に依存する比率のきわめて高い経済。公務員が増殖しても、一人あたりの給与は欧州の水準よりは低いため、副職を掛け持ちして生計を成り立たせている多くの人々。
 海運業と観光以外にこれといった産業のない輸入超過の貿易赤字国ギリシア。海外からの援助と借金、海外移民からの送金で対外収支の帳尻を合わせてきた島国ギリシアは、アジアでいえばフィリピンのようなものか。
 「欧州文明の原像」という他者イメージをうまく利用し、欧州のフリをして多額の援助を引き出してきたギリシアであるが、この虚像は崩壊してしまった。しかし、アングラ経済の発展でもわかるとおり、かなりしたたかに生き抜いてきた国であり、国民であるようだ。

 過去に特派員として駐在した経験をもつアフリカやラテンアメリカを踏まえた記述は、ギリシアをあくまでも「南の発展途上国」と位置づける視角を提供しており、「北の先進国」からすべてを断罪するワナを回避させている。
 ギリシア駐在ではなく、またギリシア語ではなく英語で取材する新聞記者のレポートであるが、「ギリシアからみたギリシア危機」という姿勢を貫いており、興味深く読むことができた。性急にわかりやすい結論を出そうとはしない姿勢に共感を感じた。

 ギリシアの行く末はギリシア国民自身の問題だ。日本の行く末は日本国民自身の問題だ。安易な比較論にあまり意味がないことを、本書によって確認すべきだろう。一読の価値はある。