淡々とした語りは、その戦いのすごさを強く印象付けます。
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野坂の戦争童話に黒田が絵をつけた、戦争童話集沖縄編の二作目です。
タイトルは鉱石ラジオのこと。父の手作りのそれを聞きながら死んでいった少年の描写から、物語は始まります。いや、死んでいるところから。そして物語は、彼が死ぬまで、沖縄戦を少年の目でみたことと、後年知られた事実を交えて追っていきます。
淡々とした語りは、その戦いのすごさを強く印象付けます。
黒田の画は、残酷であるよりも、少年につかず離れずの寄り添い方で、読者と少年のちょうど真ん中辺りに視点を定め、少年を守りながら語っているようです。
童話集といっても、そこに描かれた情報は残念ながら今の子どもには難しいでしょう。それは、あの戦争を伝えてこなかった私やあなたの責任です。でも、黒田の画にサポートされながら、説明を加えつつ語っていけば伝わると思います。中学生以上。高校生や大学生でもいいでしょう。(ひこ・田中)