とことん伝統的な、しかし強烈にスイングするピアノ・トリオである。Jeff Hamiltonがリーダーだが、オレがオレがと前に出ることがなく、バランス的には三者対等。録音面でいえば、音は太く力強く、広く広がると同時にぐーんと前に出てくる、元気な録音だ。
1曲目はDiana Krallがライヴの冒頭でよく取り上げていた、アルバムの幕開けにふさわしい快調なスイング・ナンバー。この曲でのTamir Hendelmanは、Oscar Peterson→Benny Greenを彷彿とさせる力強いブロックコードを聴かせる。とても優れたピアニストだと思うので、これから注目していきたい。彼は作編曲の才能もあるようで、次の2曲目はブラジル風の、おもしろいリズム処理が施されている。的確で多彩なドラムワーク、ブラジルのガットギターを彷彿とさせるユニークなベースソロなど、聴きどころの多い佳曲だ。
可愛らしいタイトル曲は映画White Christmasの曲らしく、ジャズで演奏されるのは珍しいと思うが、スイングしていて楽しい。10曲目と、意表をついたスローテンポの11曲目では、Hamiltonの多彩なブラシワークを堪能できる。
スタイルとして新しいことをやろうとはしていない。「新しいことはいいことだ」と考える人には支持されないタイプのジャズかもしれない。しかしレベルは高く、アレンジも新鮮だし、なによりスイングしていて、聴くものを心から楽しい気持ちにしてくれる。これ以上、何を望むことがあるだろう。