1987年、チャウシェスク独裁政権下のルーマニア。そこでは中絶が重罪とされていたため、どうしても堕ろしたい女性は闇で実行するしかなかった…。ホテルの部屋で中絶手術を受けようとする大学生と、彼女を助ける寮のルームメイト。そのふたりの長い一日を描き、カンヌ国際映画祭でパルムドール(最高賞)を受賞した力作だ。
本作の面白さは、単なる独裁政権への反発や、女同士の友情の物語ではないところ。妊娠した側の傲慢さ、助ける側の過剰なまでの献身、さらに男たちの身勝手さなどが、当時のルーマニアの社会状況を浮き彫りにしていき興味深い。長回しを多用した緊迫感溢れる映像も、それぞれの切羽詰まった状況にスリルを加味している。食事をしているだけのシーンにおいても、何気ない会話に病んだ社会への告発が潜んでいるのだ。そしてポイントには、生々しい映像が挿入され、背筋を凍らせる。ラストシーンからは、さまざまな疑問や感慨がもたらされるだろう。(斉藤博昭)
いい作品です、が・・・・
★★★★☆
ルーマニアの映画はこれが初めてです。
役者も監督もそこまで有名ではありません。
知らない人も多いと思います。
映画全体は非常に静かです。
そして、暗いです。
見る人がもっと映像に集中できるためだと思います。
撮影法も音楽もいかにもヨーロッパ映画って感じです。
カンヌ映画祭のパルム・ドールを獲得するのも納得です。
この映画の一番の見所は役者達によるリアルな演技だと思います。
とにかく、リアルです。
だが、ストーリーは若干難しいです。
ルーマニアの政治背景を知らないと、この映画に込められたメッセージは届きません。
そのため、ストーリーが納得いかないという感じもします。
内容が重いため、一回見ればしばらくは見たくないという感じです。
スリリングな演出に満点
★★★★★
主人公が追い詰められていく様を、下手に音楽など使わず、息遣い・目配せだけで伝える演出が素晴らしいです。
いつのまにか見ているこちらまで主人公に同化して、終始緊張していました。見応え十分でした。
静かな重みと余韻が残ります。
★★★★★
ルーマニアの映画をはじめて見ました。オープニングシーンでこれから尋常でないことが始まろうとしている段階から混沌としているのです。そして、そのピークを迎えエンディングに至るまで、通常は映画に付いてくるBGMも一切なく、作りものではない現実感を漂わせ、世情に沿って淡々と描写しているところが類を見ないところです。
1987年と言うルーマニア体制の社会事情の背景を強く意識させられるものであり、無味でモノトーンな世界の中で非情な出来事の顛末を綴りながら、それらを側面的に意識付けて描写しているものです。
そんな状況の中で、単にルームメイトだけなのに、女性どうしが決死の覚悟で助け合い、弱音を吐かず頑なに強く生きている力とその姿と言うものをよく表現してあり、徐々にエスカレーションして静かな感動を呼ぶ作品です。
”友情”という、そんな生やさしい言葉では表せない、生死をかけた人としての”きずな”を大いに感じ取りました。
長まわし
★★★★★
カット長げぇ‥‥。
と、思わず物語り云々よりも、まずそこに突っ込みを入れたくなるほど常に長まわし。
観終わったあと、こぶしをぎゅっと握りしめていたことに気づきはっとする、
それほど疲労を感じる映画です。
でも考えてみれば、日常生活にカットなんて区切りは存在しない訳だし、
あるとすればそれは、気持ちを切り替えるといったことで行うしかない。
この映画は、
終わりが見えない、鎖のようにどこまでも繋がって伸びていく
不安(という一種の生き物)が、日常生活に落とす影を、過大でもなんでもなく、
等身大に描いています。
過剰な演出なんじゃない?と思ってしまわないでほしい、と思います。
妊娠・出産の機能のある生き物が社会で生きることは
たくさんの目に見えない力に、縛られたり、阻まれたり、背中を押されたりすることなのです。
特に強くウーマンリブの思想を誇示するつもりはありません。
この映画が言いたかったことは、もう少し違うところにあるようにも思います。
この中絶によって誰が救われたのか、何を犠牲にしたのか。
失うものはなにもない、なんて言葉が
主人公にはすごくよく似合います。
非の付けどころがないほどだけど
★★★★☆
人物描写、社会情勢、登場人物の心の動きなどが、長大なワンカットの中から強烈な緊張感とともに溢れ出してくる。 久々に観た100点満点の映画。
ただ、、、唯一の欠点を挙げれば、おもしろくないのだ。