私が子供の頃
★★★☆☆
この本が配られたのですがとても怖かったです。
当時は谷川さんとも知らず恐怖心しか残りませんでした。
しかしどの絵本よりも強烈な印象が残りました。
出版社が子供たちに何を訴えたかったのかきいてみたいです。
なおみが見てきたもの
★★★★☆
もの言わぬ人形が、ある家の女たちに何代にもわたって関わる……
「なおみ」という名の日本人形(私の田舎では、こういう日本人形を市松<いちま>
さんと呼んでいました。)は、いわば時間を抱えこんだ人形です。
その家の女たちとともに過ごし、その家の女のこが、生まれ育ち、
少女から女に成長するのを傍らでじっと見つめ続けた人形。
この本では、写真という「絵」を用いているのでなおさらリアルです。
好きできらいで、六つの「わたし」のそばにいつも在る「なおみ」。
「わたし」は、なおみと声なき声で話し、聞くのです。
そうやって、たった六つの「私」が自分につながる時間というものを、
自分につながる記憶というものを肌身で知っていくようすが
怖いほどのリアルさで迫ってきます。
なおみの死の場面は、生々しさでちょっと息苦しいくらい。
ある日突然、女のこは蛹が皮を脱ぐように、「女」になるときが来たのです。
時を経て、また違うステージでなおみに出会うこと。
ある意味で、この家にはまっすぐで有無を言わせぬような重々しい
時間が流れているとも言えるでしょうし、また別の意味では、
なおみが時間を支配しているようにも読みとれます。
本の中表紙と最後の頁のふたつの時計が多くのことを象徴しています。
虚構と現実の狭間にある絵本
★★★★★
へぇー! こんな作品がこども向けの月刊誌に出ていたとは…
女の子と人形という組み合わせは絵本でよくあるけど、
たいがいは、クマやうさぎといったかわいい動物のぬいぐるみでしょう。
この作品ではかなりリアルな女の子の日本人形が登場し、しかもすべて写真で
つくられているので、その生々しさは半端ではない。
女の子は6歳、というと小学1年生くらいか。
そんな年頃の女の子がこんな人形と寝食を共にするという状況を考えると
いろいろなことを想像してしまいますね。
特に 祖母、母、姉、妹 といった家族との関係に
なにか複雑なものを暗に感じてならない。
もっとも衝撃的なのは、死との出会いまで描かれていることだ。
と言っても、本当の死ではなく象徴としての死ですけどね。
20年以上の時を経て復刊されたことで作品としては
新たな意味が生まれている。女の子が娘をもつようになってから
人形と再会したように。
子供の頃、この本に出会った方の感想をぜひ聞いてみたいものです。
時間を主題にした前衛的写真絵本
★★★★★
月刊誌こどものとも310号マニア待望のハード化。
谷川さんが時間をテーマにした月刊誌かがくのとも51号「とき」(時/太田大八さん画)を踏まえ、
…人間そっくりのすがたかたちをもっていながら、人間とはちがって生まれも育ちも死にもしないもの、
いわば凍りついたような時間を生きている人形というものと、やがておとなになる時間の流れを
生きているなまみの少女、そのふたつの存在の交流と対比のうちに、時間をとらえることはできないだろうか…
(以上「鳩よ!」196号より抜粋)という着想のもとに生まれた作品。
加藤子(かとうじ)久美子さんがこの絵本のために、主人公の女の子と同じ背丈のお人形を製作。
ある女の人生と人形の放つオーラに所持するのが恐くなるほど。是非一読を。