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ヒステリック・サバイバー (宝島社文庫)

価格: ¥500
カテゴリ: 文庫
ブランド: 宝島社
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Gを感じたい!加速度オッケー! ★★★★☆
暴力シーンが苦手な人にはちょっときついか。
冒頭の乱射事件、そしてリンチ。


後半部分は村社会にも通じるような、狭い世界で通用する、子供ならではの理論による対立。
でも、そこにあるのはまさに、世界に渦巻く戦争の本質なのかもしれない。


幼稚で乱暴で残酷。
でも、なんとかかんとかそれを乗り越えたところに、現実解が現れる。
甘かない、幸せだけじゃない、ざらついている血の味がする、とりあえずの小休止なのかもしれない。
それでもそこに、なんだか爽やかな感触がある。すっごくリアルな。
ヒエラルキー ★★★★★
 うまい作品だ. 学校の中において,神に選ばれたかのように振舞う体育会系を頂点としたヒエラルキーは確実にある.年齢が上がるにつれて頭の良さに対する評価が高まって行き,ヒエラルキーはより複雑化していくが結局のところ体育会系が最上位という形は変わらない.そして,それが気に食わない多くの一般人と少数のマニアが日本の学校のいたるところに存在している.
 本書ではこの体育会系とマニアが対立するわけだが,このマニアの書き方が著者は実に巧みだ.ある種の豊富な知識に裏打された根拠を元に不平不満は口に出しはするものの,行動力となると皆無に等しい烏合の衆.そしていつでも不潔さ,陰鬱さがマニアには付き纏っている.それゆえに社会的には毛嫌いされる傾向があるのだろう.
 デフォルメが行き過ぎてあまりに綺麗に書かれたスーパーマン半藤にはまるで共感できなかったが,割と現代の学校社会をうまく表現している本作.自分はどこに属していたかな,などと思い出しながら読んでみるのも面白いかもしれない.
話はそんな単純なものではないのだ。 ★★★★★
単純といえば、この本の帯やカバーに踊る"バトルロイヤル"や"筋肉バカvsオタク"の言葉もあまりにも単純すぎる表現だ。一口にバトルロイヤルというのにしたってWWEが提供するエンタメ純度が高いものと、そこに"ストロングスタイル"だの"王道"だのの思想が絡んだものでは丸っきり別のものとなってしまう。さらに後者はrebとVoDokaの事件は確かに"ジョックスvsギーク"色が非常に濃いものだが、主人公の和樹が日本人にはのどかなジャガイモ畑しか思い浮かべることのできないアメリカの町で体験した事件も、そして、帰国後に巻き込まれた抗争もそうではない。単に第3のグループの存在だけが問題ではなく、"vs"で両者を対立させれば何かを語った気になれるほど両陣営は一枚岩ではないし、登場人物(半藤のぞく)は、まるでマジック・ジョンソンやディオン・サンダースのようにその時々でめまぐるしくポジションを替えて行くのだから。そして、そのことが話をより複雑に、より哀しく方向へと導く―いや、誰も導いてはくれず、ただ転がって行っているのかもしれない。
実は的外れと思えるようなカバーデザインは案外的を射ている。
日常に潜む心の闇を抉り出した作品 ★★★★★
前作の『果てしなき渇き』でものすごいインパクトを与えてくれた深町秋生の第2作目です。前作同様、今の社会に蔓延する心の闇がテーマになっていて、何気ない日常に潜む心の怪物をズバッと抉り出して、リアルに見せてくれています。舞台は、アメリカ、そして日本の高校。銃乱射事件に遭遇して、帰国した主人公が、日本の高校で起きていたスポーツ系生徒とオタク系生徒の意味なき争いに巻き込まれていく話です。
自分の理解できない人間や趣味に反するものは、すべて敵とみなす社会の怖さや愚かさ、レッテルを貼られた人の苦悩とかが、スポーツ馬鹿とオタクの抗争の中で表現されているのがおもしろいです。
この話は、単なるフィクションではなく、今の日本を取り巻くいじめの本質というか、無意識な日常の言動一つ一つがいじめや対立を生み出していて、同じようなことが実際に自分の身の回りで起き、自分も無意識にその罪を犯しているのだということに改めて気づかされてしまいました。また同時に、自分の子供たちの学校でも同じようなことが起こっているかもしれないという怖さも味わいました。
ただおもしろいだけがエンターテインメントじゃない、避けがちな話題に真っ向から挑んでいく作家として評価できると思います。大人、それから教師に読めといいたい作品。
息づまる世界で生き抜く者たち ★★★★★
 これは面白い!
 スポーツができるだけで神に選ばれたような特権意識に凝り固まった「ジョックス」と呼ばれる生徒グループと、ネットやアニメ、音楽などを好み、自分の世界に閉じこもる「オタク」と呼ばれる生徒グループの根深い対立が、この物語の大きな核になっているのが最大の特徴だ。この対立は今まであまり描かれることがなかったはずなので、かなり新鮮である。
 同じ生徒とは思えないほど、両者は深く激突しあう。だが作者は決してどちらかに偏った見方をしない。お互いがお互い、どうしようもないしがらみで傷つき、悩み、泣き惑う姿を余すところなく描いていく。そんな中、主人公はどちらの立場にも立てず、傷つき、苦悩する。誰か彼ら全てに救いの手を、と思うくらいにその姿は痛々しい。
 と書くとかなり重苦しい作品と思われるが、ほのかな恋やさわやかな友情も生き生きと描かれており、作者の前作とはまたちがったスピード感ある文章もあってか、一気に読むことができる。ラストもとても好感が持てた。必読!