基本的なことからわかる本
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スマートグリッドは、「賢い送電網」「次世代送電網」などと言われており、電気事業をIT化して高度なサービスや自然エネルギーの大量導入などを実現するものだと見られている。とはいえ、技術が電力とITにまたがる上、送電網だけではなく、メーターから建物内のスマート化まで視野に入っており、しかも必要な技術が各国の電力供給システム異なるように違ってくるという。各国でさまざまなニーズに応じた実証試験が計画され、また実際に進められている。しかし、こうしたスマートグリッドの全貌を知ることは、極めて難しいというのが現状だろう。
そうした現状において、本書はスマートグリッドの基礎的な知識を得るには格好の著作である。スマートグリッドとは何かといった基本的情報や最新動向だけではなく、背後にある日本を含めた各国の電気事業の姿までが紹介されている。中でも「発電・送配電の歴史」として過去を振り返ることは、将来のグリッドの姿を考える上で、示唆に富むものだ。こうした記述の上に立って、何が問題となっており、どんな技術に注目が集まっているのかが、手に取るようにわかるようになっている。著者自身が、公益事業に長年かかわってきたゆえに、こうした入門書が可能になったと言えよう。
また、本書ならではのないようとして、日本ではまだ関心が低いが、高圧直流送電線の整備に関する著者の強い主張が見られるが、これは、傾聴に値する。