川柳に生涯をかけた人びと
★★★★☆
様々な川柳作家や結社については、本書で初めて知りました。
本書は、その川柳結社「番傘」を率いた岸本水府の伝記とともに川柳の魅力をあますところなく描いています。大勢の川柳作家も登場し、その個性と作品がたっぷりと紹介されていますので、近代の川柳文学史的な側面もあります。
岸本の本業は広告文案家、コピーライターです。彼が関わった「福助足袋」「壽屋(現サントリー)」「グリコ(現江崎グリコ)」「桃谷順天館」などの当時の広告についても詳しく知ることができます。
岸本の生年は1892年ですから、背景として描かれる20世紀初頭から1960年代にまでの大阪の風俗も素晴しく、大阪生まれの著者ならではだと感じました。
文章が読みやすく、内容も豊富ですから、文庫本3冊で1600ページ以上でも、苦になることはないと思います。