ノイジーでラウドなロックンロールの要素を持ったハードコア
★★★★★
UKハードコアの雄、G.B.Hの記念すべき1stアルバム。(イギリスに同名のバンドが存在したため、この頃はCHARGED G.B.H)
バンド名はイギリス警察において凶悪傷害事件を意味するコード、
(法律用語で「傷害」を指す「Grievous Bodily Harm」の略の)GBHから。
G.B.Hはバーミンガム出身の4人組で、デビュー・ギグは80年のデビス・カップの最終日に行われた
「売春婦慈善ギグ」で、ポイズン・ガールスとナイチンゲールスとの共演でした。
当初地元のクラブ、「クラウン」を中心にローカルな活動をしていましたが、dischargeの
オープニング・アクトとして出演した時に、彼らの所属するCLAYレコードのオーナー/プロデューサー
であるマイク・ストーンに気に入られ、契約を果たし、81年8月、8曲入りの12" Single
「Leather, Bristles, Studs & Acne」でレコードデビューを飾り、この1枚でdischargeと並ぶ
ハードコア・パンクのフロント、CLAYレコードの看板アーティストに一気に浮上しました。
82年の彼らの活躍は素晴らしく、(英サウンズ誌の年間チャートによると)
インディペンデント・シングル部門の10位に「No Survivors」、
パンクのLP部門の5位に本作「City Baby Attacked By Rats」、
パンク・シングル部門には8、9、15位と3曲もチャートイン。
そのヘヴィ・メタル的要素を加えた独特のハードコア・サウンドを完全に定着させ、
ライバルのdischargeをセールス面では完全にリードする程の人気があったバンドであり、
今現在でも根強い人気を誇っています。
ルックスも、ハリネズミのようなスパイクヘアーにトロージャンヘアーに鋲ジャン、弾丸ベルト...と抜群で
後続の、主にストリートパンクと呼ばれるバンドのほとんどが、G.B.Hのファッションスタイルを踏襲している
のではないかと思います。
84年6月、出国のビザの申請をする時に「正装してこい」と言われ、ギンギンのパンクファッションで
”正装”していったら申請が下りず、来日公演が中止になり、日本のファンががっかりした...
というようなエピソードが物語るように、シリアス一辺倒のバンドではなく、基本的にパンク/ロックンロール
の音楽を楽しむといったスタンスを持つバンドで、歌詞の内容から判るように、特別な社会意識、政治意識を持っていません。
そこのところを批判されたりもしましたが、本人たちは全く気にせず、スタンスを崩していません。
最近アルバムのリリースこそありませんが、今でも現役で、
ドラム以外のメンバーは不動であり、メンバーの結束は固いです。
今まで9枚のアルバム(企画盤、編集盤、ライブ盤を除く)を発表していて、
基本的な部分は不変なのですが、アルバムごとに微妙にニュアンスが違い、
ファンや評論家の好みや評価が分かれるところですが、
この、G.B.Hの人気を決定的にした1stアルバムと、
12" Singleである「Leather, Bristles, Studs & Acne」(81年)、
それに7" Singleの「No Survivors」(82年)、同じく7" Singleの「Sick Boy」(82年)をプラスした
コンピレーション「Leather, Bristles, Sick Boys, No Survivors .. ..」(82年)
これらの作品はG.B.Hのファンやハードコアのファンなら誰もが納得する内容であり、
音楽誌などでの(ハードコア込みの)パンクベスト等の企画には、ほぼ必ず登場するのが本作です。
このアルバムは基本的なUK82サウンドながら、ノイジーでラウドなロックンロールの要素を持ったハードコアであり、
「ハードコア」という括りでは捉えきれないスケールを持った内容です。スピード感溢れる痛快なサウンドは、
少しも暗いところがなく、あくまでカラッとしていて、そこが当時のハードコア・シーンにおいて新鮮でした。
2曲目の「Sick Boy」はシングルの曲をアルバム用にリメイクしたもので、UKハードコアの中でも5本の指に入る名曲です。
G.B.Hはほとんどのアルバムにカバー曲が入っていて、このアルバムでは、スローター&ザ・ドッグスの「BOSTON BABIES」を演っています。
これだけ有名なバンドながら、他の同時代の大物バンドと比べ極端にフォロワーが少ない、それだけ「簡単には真似が出来ない」、
高いオリジナリティーを持ったサウンドであると言えると思います。
以上、内容については申し分ないのですが、
ただ残念なのは、Relativityから発売されているものは、Captain Oi!盤と同じ音源なのです。
Captain Oi!からは、コンピレーションの「Leather, Bristles, Sick Boys, No Survivors .. ..」、
9枚目のアルバム「Ha-Ha」以外の主だった作品が出ています。
2枚目のアルバム「City Babys Revenge」以降のアルバムのリマスターは素晴らしいのですが、
「Leather, Bristles, Studs & Acne」と本作「City Baby Attacked By Rats」のリマスターには疑問が残ります。
もちろんサウンド自体はクリアーなのですが、変にベース音を前に出しすぎていて、ドラムの音がこもっている...
というか、音のバランスがおかしいと思うのです。おかげで、このアルバムの魅力が半減してしまっています。
(ボーナストラックはそうではありません)