アイヌの枠をとっくに越えつつアイヌにこだわったロック
★★★★☆
OKIの活動の特徴として、彼自身がトンコリのオリジナルな演奏を知らずに育ったため、最早存在しないアイヌ音楽の源流と現代的な文脈を求めながら各地の音楽を旅しているようなところが挙げられる。よって、かつての僕はあくまでアイヌ音楽をベースにした「OKIの音楽」を聴きにライブに行っていた。が、本来アイヌはかなり広範な国際貿易を行っていた交易民でもある訳で、そう考えるとOKIの音楽の漂白と変化の過程自体が実は結構本来の「アイヌらしい」活動なのではないかという気が最近はしている。
音的には相変わらずワン・アンド・オンリーなOKIの「ロック」だが、若干ボーカルが弱い彼だけに、ライ・クーダーがプロデュースした「No One's Land」のように女性コーラス(MAREWREWの女の子達、メンバーの一人が本盤も4・5曲目に参加)をもっと前面にフューチャーした方が広がりがあったのではないかと思う。あと、もっとゴリゴリにダブを導入にしても面白かったかも。
とはいえ、「サハリン・ロック」の名に恥ないミュージック・トラベラーの最新成果報告であることには変わりない。マーケティングが作り出す産業音楽とは百万光年離れたところで、ミュージック・ワールド本来の面白さを思い出させてくれる。ライブで味わうのが一番楽しめるんだろうね。