高評価と表紙にそそられ購入したが、中身は下手な同人誌レベル。

これで「売り物になるのか？」と唖然とした。

　商業誌掲載分３つ（「あなたさえいなければ。」）と同人誌作品再録７つ、書き下ろし短編２つという構成で、ほとんど同人誌分。商業誌でしか追っていない人はほとんど書き下ろしみたいな物で嬉しいし、自分のように同人から追っている人間も、細かく別れている作品が１冊にまとまってくれていて嬉しい本。
　個人的には雑誌“楽園”掲載分の「あなたさえいなければ。」すげぇ好み！いや、主に理系クールビューティーな彼女が風邪引いて思わず本音ぼろぼろのデレ状態になる、とおいうシチュエーションに夢広がりまくリングですよ。

　シギサワカヤの作品はほとんど（というか全て？）が恋愛を中心とした話なんですが、この短編集で多彩な恋愛模様をかき分ける巧さがよくわかります。
　「世界の果てで待ち合わせ」のようなノーフューチャーな感じの近親相姦話を作ったかと思えば、「ひみつのことば」のちょっとした男女の会話から情事へ繋がる話を描いたりもする。
　共通するのは、一種の「アブノーマル」さと、「墜ちる感覚」でしょうか。

ありそうでなかったシギサワカヤの短編集。個人的にかなりオススメな作家さんであることもあるけど、著者を知らなかった人も、短編集と言うことでまず最初に手を出してみるのにオススメじゃないでしょうか。（他作品は長編が多いし、作品によってちょっとカラーが違うので）

　知ってる人は間違いなく買いだし、知らなかった人は是非この機会にシギサワカヤの魅力を堪能してください！

　表紙で期待したほど直接的なエロがメインというわけではないが、だからせめて表紙で裸体を、という心意気なら買いたい。
　この本に限らず、シギサワカヤの作品は注意深く並べられた言葉が良い。縦書きも横書きも出来る日本語の特性を上手く利用して、台詞と心理ネームを巧みに寄り添わせて、心の中のもやもやを説明不能のまま描き出しているのが見事。
　でもやはり、絵的なことをいうなら、もっとえっちなとこをばーんと描いてくれてもいいんですよとは思う。

本書は表題作を含めた７作（全12作収録のうちの半分以上にあたる）が同人誌に発表されたものである。

読んでみて、いいな、と思った作品が２作あったが、いずれも同人誌初出の作品であった。

表題作の『つめたく、あまい。』。控えめに言っても少々変わった少女「アイス」（もちろん、本名ではない）とバイト仲間（？）だった少年高瀬との話。表紙に描かれているのが「アイス」で、怖い話か？と思ったが、そうではなかった。

もう１作は、『世界の果てで待ち合わせ』。暗めの話だが、こういうタイプの話は嫌いではない。

全12作を読み終えて思ったのが、商業誌と同人誌発表作ではやはり雰囲気が違う、ということ。好きな（自分の描きたい）ように描ける同人作品のほうが（比較級での表現になるが）質が高いように思う。（本作収録作品ではないが、新書館『WINGS』掲載のシギサワカヤ先生の作品でも浮き沈み、というかいいな、と思えるときと気づかずに（失礼！）飛ばしてしまうときがある。

そのため、本作は購入前期待値３（こちらでの星換算に同じ）だったのだが、上記のような良い作品に出会えたことを加味してプラス１評価の星４つ。