ひょっとして平成の山口瞳さんに化けるかも
★★★★★
サントリーの「ウィスキーヴォイス」などに掲載された文章をまとめたのが本書。一読、サントリーは第二の山口瞳さんを大竹さんの中に見ているのかな、と思いましたね。
どちらも東京生まれ。クールでありながら、時々、上質なセンチメンタリズムがあふれ出る。
例えば、四国にお遍路旅の取材に行った帰り、どうしても地元で世話になった飲み屋さんで一杯。羽田に着いてからもなんか寄りたくなって馴染みのバーに立ち寄る。そして〆がこれ。
《「四国、行ってきたんだ。おもしろかったぜ」
土産話を肴に飲む酒は、また格別でしてね。ああ、旅のお酒ってのは、実に、実に、長くなるもんですねえ。》
どうです?いいでしょ!
突然思い立って「特急かいじ」に乗り、甲府の「くさ笛」という居酒屋に飲みに行くという話もいい。新宿やきとり横町にあるバー「みのる」に定年を迎えた日に、ひと言、今日で最後だからと挨拶にくるサラリーマンの話も、ありがちだけど情景が目に浮かびます。