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不況のメカニズム―ケインズ『一般理論』から新たな「不況動学」へ (中公新書)

価格: ¥819
カテゴリ: 新書
ブランド: 中央公論新社
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とあるケインジアンによるひとつの見方 ★★☆☆☆
この本に魅力がないわけではない。乗数効果の誤謬の指摘、そして、流動性プレミアムを使ったモデル、これらは著者のオリジナルと思われる。この著者は独創性に優れた人物なのだろう。しかし、疑問も多くある。
著者は新古典派経済学に対抗し、ケインジアンを標榜する。それはいいのだが、社会情勢も経済理論も自分に有利に解釈しすぎている。十分な論理展開を与えていない。多くの読者は知らないことを、当然知っているべき知識のごとく話を進めてしまう。
批判しているわりには新古典派とそれに近い経済学への知識が不十分な印象を受ける。典型的な例は、「小泉政権下の構造改革により景気は後退」とし、「その後、これ以上景気が悪くならないという安心感から投資が膨らんだ。」とする。しかし、市場に任せておけば価格調整が進んで、底を打ち、それから景気は上がっていく、というのが新古典派の考え方。つまり、新古典派的な改革が功を奏したということになる。
 流動性プレミアムを使ったモデルは、もしかしたら新しい方向性を持つかもしれない。しかし、そのモデルを知りたい読者はどれだけいるのだろうか。
 この本で解説されている乗数効果の誤謬、この考え方には同意できる。政府支出が生む価値を考えていないことを指摘。しかし、物足りない。財政出動が消費者の貯蓄、消費の割合に影響するときには理論が数学的に成り立たなくなること、政府支出に頼る構造を作りかねないこと、などまだ批判できるところがあるはず。ついでにケインジアンを標榜する本の見所がケインジアンの誤謬というのは皮肉だ。
 さて、ここまで書いたがこの本に魅力がないわけではない。誰にこの本をお薦めしよう。掲げた乗数効果の誤謬についての説明を読むためにこれ一冊買ってもいいという人か。あるいは主流ではないものまで含めて多くの経済モデルを知りたいという非常に意欲的な経済学研究家、となろう。
消費関数の否定 ★★★★☆
小野理論を読んで驚いたのは、自分の生活実感に近い消費者の姿が描き出されている事だ。それをこれだけ体系付けられるのだから一読の価値がある。特に強調したいのが「流動性の罠」と称して貨幣自体が持つ魔性の魅力を経済学的に記述し得たことだ。

だが、おそらくもっと革新的な主張がある。それが消費は所得に依存すると言う「消費関数」の否定だ。「所得が上がれば消費が増える」という前提が無ければ乗数効果はないし、減税は景気対策にならない。当然、高額所得者に子供手当てを支給しても消費は増えない。そして、逆に増税しても消費は減らない。はたしてこれは、現代の国家運営の根本を覆す認識ではなかろうか。

では、自分の生活実感と比べてどうだろう。所得が増えたら消費を増やしてきただろうか? 答えは多分ノーだ。 宝くじで3億当たればそのどれだけを支出に回すだろうか? 殆ど最小限の金額だ。 失業して収入が無くなったら消費を減らすだろうか? 多少は減らすだろうが、貯蓄と再就職の可能性を勘案して最低限の減少にとどめるだろう。確かに、消費の金額は収入と全く無関係ではないが、それだけを以って語れるほどの決定的関係にはない。著者の指摘は間違っていない。

所得が多かろうが少なかろうが、人間が生きてゆくにはそれなりのコストが掛かる。そのレベルまでは収入は全額支出され、足りなければ借金で賄わなければならない。その意味でも消費関数は万能ではない。消費関数が正しければ、借金する人間は存在しないわけだから。



面白く刺激的な「経済理論」です ★★★★★
いまごろ読んでるのですが、「再版にあたって」のついた、2009年
3月版です。

大学のケインズ理論については、最近その役割について、いろんな意見が
出されているようですが、本書は、「需要不足の可能性」への着目をケイ
ンズのコアとしたうえで、その不足の原因を、マクロ消費関数から説明するの
でなく、「一般理論」17章の「自己利子率」を発展させた「消費利子率」を
使って説明しています。

不況は「流動性選好」がもたらす流動性の罠が実物投資に回る購買力とともに
消費に回るはずの購買力も吸い込んでしまう。そのため、投資も消費も減って
総需要が不足し、所得を引き下げる、のだと。(p。171)

不況の場合は、デフレ状態なので、1年消費を我慢すれば、その時、現在より多
くの消費ができる。つまり、消費の「自己利子率」が高くなり、消費者は貨幣を
使わないで、貨幣保有を選好する、かくて、総需要の不足が生じるのだと。

消費の利子率を下げるためには、「安心」の確保と不安の解消が必要である。
アカロフの近刊には、「安心」乗数という概念が出てきているが、多分同じ意味
で使われていると思われます。

ほかに、いわゆる「乗数理論」はケインズの誤りであることが、詳しく解説され
ています。

本書2章から4章は「一般理論」の解説にもなっているので、翻訳本と照らし合
わせて読むことができます。
全体に、自由な発想で、のびのびと書かれた本です。
経済は楽しい ★★★★☆
新書らしく、簡潔な説明で、経済に関しては門外漢である私にもよくわかった。
そして、この不景気はどうしようもないこともわかった。
ただ被害を最小限に抑えながら民衆がサブプライムローンという言葉の実感が薄れてきたときに、ようやく経済は好況に向かうだろう。
ケインズ理論にもとづく理解可能な動学をめざしつつ失敗している ★★★☆☆
ケインズの「一般理論」は難解だが,この本はそれをできるだけ平易に解説しようとしている.単に解説するのでなく,その「あやまり」をただして,著者独自の「不況動学」をきずこうとしている.小島寛之は Wired Vision の「環境と経済と幸福の関係」のなかでこの本をベタぼめしているし,Amazon の書評などでも評価はたかい.

しかし,ケインズにあやまりがあったとしたら,それは動学的な経済理論のむずかしさゆえであり,おなじような道具でそれにたちむかっている著者がケインズにくらべてとくに有利なところがあるとはおもえない.というわけで,この本にも疑問な点は多々ある.そもそも出発点となっている,ケインズが流動性の罠から投資の限界だけがきまるとしているのに対して「不況動学」ではそれが (投資の限界とは独立に (?)) 消費の限界もきめるとしていることからして理解できない.また,現在の不況との関係を把握したいが,さっぱりわからない.

この理論が「動学」だと主張するためには単に経済の均衡点をしめすだけでなくそこにいたる軌跡まできめられなければならないはずだが,それにはまったくふれていない.金融工学のような精密な論理がなければ,ひとを納得させることはできないのではないだろうか.