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どこへ行く!?介護難民―フィリピン人介護士にケアを受けるということ

価格: ¥1,995
カテゴリ: 単行本
ブランド: ぺりかん社
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浅い! ★☆☆☆☆
浅いね〜!

究極的には、日本で「いい介護」を受けられない日本人の「介護難民」は、フィリピンに行けば「いい介護」が安く受けられ、おまけに現地の労働を増やす。だから、日本人は介護を受けることも含め、「グローバルな国際社会で生きる選択肢」を持とう、という。いってみれば、ありきたりの内容。

稲葉女史は在日フィリピン人介護士協会の顧問だという。この方、彼女たちがなぜ介護という分野を選ぶのか、選ばざるを得ないのかを、より深い、構造的なレベルで理解しようとしているのだろうか。日系ブラジル人を含め、これまで外国からの労働者や移住者、移民たちは、住宅・教育などのさまざまな面で、きっちりと制度化された支援を受けることはなかったことはご存じないようだ。確かにフィリピン人は「お年寄りが好き」「介護が好き」と口ではいう、あるいは、本気でそう思っている人もいるかもしれない。でも、彼女(彼)らの言葉で語られていないのは、アジア人で、しかも「エンターテイナー」というスティグマを背負いながら生きている女性が中年になった時、日本社会で生きていくために何ができるのだろうか、という点。外国人のシングルマザーが定住ビザで、一部生活保護や手当を受けながら生きていくとしたら、何ができるのか、という点。彼女(彼)らにとって、必要な移民政策、たとえば主婦や学生のボランティアに頼らない、公的な生活・人権保障という意味での社会統合としての言語指導や職業訓練といったものが欠如し、だからこそ選択肢がないということは、想像されたのだろうか。

フィリピンで介護を受けることで、本当に双方にメリットがある、という話も、最近のリタイヤメント・ビジネスではよく聞く話。しかし、「グローバルな国際社会で生きる選択肢」を享受できるのはフィリピン人も同じなんだろうか。本著に出てくる日本人たちは、先細りする年金などの収入をカバーするために、フィリピンを選択したと述べている。介護をする側が低賃金でサービスを提供してくれるからこそ魅力的であるということだ。確かに、現地の物価からみれば「相場」かもしれない。分からなくはないけれど、現地で介護をするフィリピン人たちにとっては、日本人と同じ「グローバルな選択肢」ではなく、日本人やフィリピン人エリートが「相場」だとする低賃金に甘んじなければならないからこそ、これまで200に及ぶ国や地域で海外就労をしてきたんじゃないんですか。実際、フィリピン人の場合、海外労働前に仕事をしてた人も結構いるという。そうだとすれば、この「グローバルな選択肢」は、彼女(彼)らにとってのものとは言えない。

本著には、強固なオリエンタリズムと国際分業による日本人の特権維持の姿勢が随所にみられる。日本人の「介護難民」を減らすために必要なことは、安易な「グローバルな国際社会で生きる選択肢」ではなく、まずは国内の状況改善と、国際的不平等の是正を進めていく地道な努力ではないだろうか。