Complete Decca Recordings
価格: ¥5,320
Holiday recorded for Decca between 1944 and 1950, a period in which she was at the heights of both her popularity and her vocal powers. The music is less jazz-oriented in its backing than were the earlier Columbia and Commodore or later Verve recordings, but these are superb vocal performances, including matchless renderings of "Lover Man," "Don't Explain," and "Solitude." Holiday achieved the highest level that torch singing has ever known, creating consummately expressive, almost etched renditions that are richly nuanced, often enhanced by tasteful string arrangements. Holiday's deepest musical sources are strongly evident in songs associated with Bessie Smith, including the earthy "Gimme a Pigfoot (and a Bottle of Beer)," and two spirited duets with Louis Armstrong. --Stuart Broomer
歌に最も安定感があった頃のビリー・ホリデイの記録
★★★★★
伝説級のジャズ・シンガーとして名高いビリー・ホリデイも、約25年もの長いキャリアを順風満帆に通せたわけではない。キャリア初
期には驚くほどハリがあり声量があった彼女の声も、多量のアルコール・麻薬摂取により晩年は正に別人かと思う程に声は枯れ、声
量も失われていった。彼女の最晩年にあたる1950年代に録音された名盤「レディ・イン・サテン」や「ラスト・レコーディング」等は、か
らからに枯れ切った声をなんとか絞り出し音を出している、という印象だ。それでも晩年のレコードが何故名盤と言われるのか?それ
は悲しみに満ちた彼女の人生から生まれた心情をそのまま歌の歌詞一つに染み込ませ、それを聴き手に強く訴えかける彼女生来持
っていた独特の歌唱法があったからに他ならない。
しかし彼女のファンの間でも、彼女の最盛期については意見が分かれることが多い。若きレスターヤングやベニー・グッドマン等の凄
腕ミュージシャンとセッションと繰り広げるようにレパートリーを増やしていった初期コロムビア在籍時代、「奇妙な果実」として有名な
表題曲を始め16曲のレコーディングを行ったコモドア〜ビッグ・オーケストラをバックにヒットを飛ばしたデッカ在籍時代。声が枯れ始
めた中にも凄味を感じさせる名唱を数残した晩年のヴァーヴ在籍時代。しかし彼女の歌声の艶や安定感という視点で「最盛期」を選
ぶとすると、比較的身体のコンディションも良好で、安定してヒットを飛ばし批評家からも高い評価を受け続けたデッカ・レーベル在籍
時代(1944〜1950年)を最盛期と呼ぶ傾向が比較的強いようだ。
本盤は、彼女のデッカ在籍時代に吹き込んだ50曲の名唱(デモ・ヴァージョンも含む)をCD2枚組にした正に歴史に残る記録である。
曲中で彼女自身やサイドマンの意見で演奏を遮ったものもそのまま収録しているところも興味深い。
デッカ盤の録音は、凄腕ミュージシャンと互角に張り合ったコロムビアの録音程のスリル感は無いが、何より彼女の歌を前面に押し出
した構成のため、ビリーの歌の特色も掴みやすい。
ビリー・ホリデイが後進のシンガー達にリスペクトを受けているのは、技巧やピッチの確かさ等の理由ではない。現在のシンガーが歌
を彩るために駆使するスキャットやアドリブ等の技巧を使わず、ほぼストレートに忠実に歌われる旋律。しかしそんな技巧を駆使せず
とも、彼女が歌に込めた心情が聴き手の心を打つ歌のオーラだろう。
逆にそれ程個性の強い人でもあるので、アクの強さも否定できず、人によって激しく好き嫌いが分かれるタイプの歌手であることも付け
加えておきたい。
CD2枚組+約40Pに渡る詳しいインナーノーツ+各資料付きにしては値もお手軽な本盤、ビリーに少しでも興味がある方は是非聴いて
いただきたい。