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私の赤くて柔らかな部分

価格: ¥1,785
カテゴリ: 単行本
ブランド: 角川書店(角川グループパブリッシング)
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幅広い年齢層の心をとらえるおだやかなスローフード小説 ★★★★☆
喪失感とその癒しを求めてのゆるやかな彷徨を詩的に描いたロードムービー小説。

主人公は30台の独身女性。恋人とほのかに慕っていた上司を同時に失い、激しい喪失感に苦しむ。アルバイト先の映画配給会社をぽかりとやめてしまい、行き先も告げず立ち去った恋人のぬくもりが残るアパートの一室に引きこもる。上司の「お別れ会」のためにようやく外出したが、その場になじめない。その足であてもなく電車に乗り、見知らぬ町で下車したまま1ヶ月ものあいだ、ただ何となくその町に居続ける…。

ほんのりとした文体で不思議なほど心に響く。現実と幻覚の描写が交錯するが、目に浮かぶ映像は具体的でリアル。このままTVドラマか映画になってしまうのではないだろうか。幅広い年齢層の心をとらえるおだやかなスローフード小説。
独身女性が心の落としどころを探す旅を詩的に描かれています。 ★★★★☆
ストーリーは喪失感をもった30代独身女性がふらりと知らない街に住み着いて、心の整理をするお話。ここでの喪失感は失恋と上司の死というダブルパンチで、数ヶ月仕事もできず引きこもっている主人公が、上司のお別れ会に参加するところから始まる。

渋谷と表参道の間の会場に行くまでに、別れた相手を思い出しつつ、それと重ね合わせて上司に対しても、信じられないという思いに占領されていく。お別れ会の会場に着いても、違和感と居場所のなさですぐに外にでてしまい、帰宅するために電車にのるが、かえりたくないという気持ちから電車に乗り続けて知らない街に着いてしまう。

ストーリのほとんどが、過去の男との思い出や後悔などのどうどう巡りで、生きているけど会えない人への未練と、死んでしまったけどなんだか信じられなくて、会えそうな気がする上司との対比はなんかリアリティを感じてしまいます。

この別れた相手はダメダメ人間で、自分勝手の典型的な人。友人からもし相談を受けたら、冷静に「あきらめな」と確実にいえるのだが、これが当事者となると分かっていても。。。。ということなんだろうなあ。

女性の視点から、心の動きや立ち直り方に関しては、やけにこの主人公の気持ちに共感してしまいますね。なんだろう、若いときと違って次があるという希望より、失ったものに対する執着心のほうが勝っていて、なかなか断ち切れない、次ぎにいけない。だけど、時間は確実に過ぎていて、うまく立ち直れないと将来への不安もある。。どこか冷静だけど、感情に素直に対峙したいという無意識も働いているような気もする。

ということで、ちょっとあり得ないと思いつつ、知らない街に1ヶ月以上も滞在して、これらの心の葛藤を整理していく描写にとてもリアリティと共感することができたわけです。確かに働きながらとか、1週間旅行してっていうのは中途半端すぎる。数ヶ月という時間が次の人生へ歩き出せる時間なんじゃないのかな。

表現の仕方も映画的で本だけど映像が浮かんできて、あっという間に読めちゃう本でした。