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洗脳するマネジメント~企業文化を操作せよ

価格: ¥2,310
カテゴリ: 単行本
ブランド: 日経BP社
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企業文化というもの ★★★★★
「企業文化」という言葉を聞いて、何のイメージも浮かばないという人はまれだろう(もちろん会社勤めの経験がない学生であれば別だが)。「企業文化」と似たような感じの言葉で「社風」という言葉もある。いずれにせよ、「具体的にこういうもの!」と表現するのが難しいが、その企業の特徴を語る上では欠かせない会社の雰囲気のようなもの、でも外からはよくわからない面を持っているものと言えるだろうか。就職活動を無事に終えていざ会社に入ったは良いものの、「なんか社風が合わないんだよなあ」という思いを抱く人も少なくはないのかもしれない。

『洗脳するマネジメント』はあるIT企業を対象に、「組織エスノグラフィー」という手法を用いて企業文化を分析した本だ。「エスノグラフィー」とは、未開民族を調査するために、その民族と一緒に生活をしながら内部者の視点で文化を調査するという文化人類学の手法だという。『洗脳するマネジメント』はその対象を民族ではなく企業に移したというわけだ。本編に続く「解説」にも書かれているが、その深く濃密な記述は良く書かれた小説のようで、読み進むうちに引き込まれてしまう。それだけに、本書は読み物としても非常に面白い。

さて『洗脳するマネジメント』の舞台は、エンジニア出身のあるカリスマ経営者が率いるIT企業である。そこではマネジャーよりもエンジニアが尊重され、現場の誰にでも大きな自由が与えられている。この企業で何よりも強調されるのは「自律」と「自由」だ。社員はみな、その文化に魅力を感じまた誇りを持ちながら働いている。この企業では他方で企業文化をたくみに操るための様々な研究が行われ、それが様々な研修・講演などといったスタイルで実践され、まさに「自由で闊達な文化」を管理ツールとして活用しているという実態が明らかになっていく。企業文化を社員の管理ツールとして用いる事の是非を判断するのは困難であり、本書も判断を避けている。しかしどちらかといえばネガティブに分析されている印象を受ける。

これは何もIT企業に限ったことではないだろうし、日本では企業文化を管理ツールとして利用するような企業は少なくないかもしれない(傾向としては減少しているのかもしれないが)。「自分が勤めている会社もこういう面があるな。」と思われた方はぜひ一読されてみてはいかがだろうか。きっと興味深く読めるだろう。
研究者向きの本です 誤訳が多そうなので原書を薦めます ★★☆☆☆
この本は著者の社会学の博士論文がもとになっています。著者が論文を書いたのは1986年で、前年 DEC に長期間滞在して企業文化の調査を行っています。ご存知のように DEC はコンピュータ業界の超優良企業でした。なお、この本では社名がテックに改められていますし、人名もすべて仮名です。

著者が社内で見たこと、社員から聞いたことを、一方的にならないような取捨選択を行ないながら、淡々と記述し、簡単な考察を加えています。内部に入らないと分らない、様々な行事や会議の様子、指示の伝え方、正社員や派遣社員、契約社員の行動、意見などです。この方法を著者は民俗誌(ethnography)と呼んでいます。

この本の第1章から第3章までは、やや退屈に感じられ、もう少し短くても良いかなと思いました。第4章から、特に、会社に対する社員の反応を描いた第5章が興味深く感じられました。様々な立場の従業員の声が語られます。たとえば、そこに存在しながら初めからいなかったかのように扱われる非正規社員たちです。

クリスマスに七面鳥が正社員にだけ配られるのですが、契約社員が泣き出してしまいます。彼女は2年目なので一度体験して知ってはいます。ですが、自分の立場を理性で理解できても、感情で受け入れるのは誰にでも難しいのです。管理者は往々にしてそれを忘れてしまいます。

この他にも多くはありませんが、非正規社員が正社員に感ずる、遠慮や気まずさの感情、その結果の行動、非正規社員の意見などが記されています。更に詳しく記述し、深く考察し、独立した本を著者が書いてくれればと思いました。社会学の研究者だけでなく、広く関心を特に日本では集められると思います。

なお、巻末の解説は先に読んでしまうと余計な先入観が入ってしまいます。たとえば、イデオロギーは日本語では政治の用語ですが、この本の ideology は単に会社の価値観(の体系)です。

また、解説者は Goffman 流の分析と言っていますが、著者のいう presentational ritual は Goffman のものとは内容が異なります。Goffman の演劇的解釈も、会社の価値体系(ideology)の演劇化という記述(この本は誤訳して「ドラマチックに・・表現される」としていますが)のみで、それ以上の分析はありません。解説者は多分 Goffman を読んでいないと思います。

この本の価値は、解説者の言うような分析にではなく、DEC の企業文化をその中に長期間滞在して民俗誌的に記述したことにあると思います。

この本の一番の問題は読みにくいことです。第4章から読み始め、意味が取りにくいのでネットで一部公開されている原文と比較してみました。その部分だけかもしれませんが、誤訳が相当ありました。他の章にも前後と整合しない表現が所々にあります。経験上こういうのは大抵誤訳です。

また、「テック語」という社員たちが使う独特の表現が、頻繁に登場する社員たちのインタビューを活き活きと伝えているようです。ですが、これも翻訳ではその語感が伝わりません。誤訳の問題と語感の問題があるので、社会学的な調査に興味のある方には原著 Engineering Culture を読まれることをお勧めします。

証拠も出さずに誤訳とは言えないので、以下、第4章の冒頭の比較を示します。興味のない方は飛ばしてください。以下は翻訳の検証のみです。

第1行目 「これはただの仕事じゃない。お祝いなんだ!」
原文 “It’s not just work -- It’s a celebration!”
対案 「仕事なんてものではない、一種の宗教だ」
注釈 著者は会社の様子を従業員のことばを借りて説明しています。硬い言葉でいえば「(この会社で我々がするのは)単なる仕事でなく一種の(会社を讃える)式典である」です。この本の翻訳では誰のことばで何の意味かが伝わりません。

第3行目 御託を並べる会社
原文 a song and dance company
対案 大騒ぎをする会社
注釈 give a song and dance が「御託を並べる」という意味なので、混同したのでしょう。

第4行目 テックには自明の理と思われる通念が数多く浸透しているが
原文 Like much of self-descriptive conventional wisdom that permeates the company,
対案 社内にあふれる「自称」一般常識の多くと同様
注釈 他では通用しない「常識」です。

第5行目 これらの観察にもやはり・・・なるほどと思わせるところがある。
原文 these observations … contain a valid observation.
対案 こういう見方の中にも・・・確かなものがある。
注釈 自称の常識の中にも正しいことがあるように、社員のobservationsにも確かなものがある。

第9行目 お互いに直接顔を合わせる構造化された集まり
原文 a variety of structured face-to-face gatherings
対案 日程に組み込まれた様々な顔を合わせる集まり
注釈 動詞の structure は構造化ではなく日程表に載せるという意味です。

第14行目 れっきとしたメンバー
原文 what members in good standing are to think, feel, and do.
対案 良き社員(が考え、感じ、行なうべきこと)

第15行目 はっきりした言葉で、例をあげて、詳しく説明する
原文 articulate, illustrate and exemplify
対案 言葉と図と例とで示す
注釈 ここの illustrate は図で説明するという意味です。

第16行目 テック文化とメンバーの役割を経営の立場から規定したもの
原文 the managerial version of Tech culture and the member role it prescribes
対案 経営の立場から見たテックの文化とその文化が規定する社員の役割
注釈 規定されるのは the member role のみです。

第17行目 (イデオロギーが)ドラマチックに、生き生きと表現される
原文 is dramatized and brought to life
対案 劇化され命を吹き込まれる
注釈 形のないものが劇(講演や会議など)という形を得て、あたかも生き物のように活動する、という意味です。

第19行目 儀礼の意味と結果
原文 The meaning and consequences of ritual
対案 儀礼の意味と影響
緻密なエスノグラフィー ★★★☆☆
 経営管理の一環として,企業文化を作り出し,従業員をあの手この手でその文化に染め上げていく。そのエスノグラフィー。もとは博士論文。緻密な聞き取り調査のたまものであるが,どうもテック社の従業員のエピソードがアメリカ的で,演技がかって感じられて,なじめない。日本企業だともう少し共感的に読めたのだが。ただ,こういう本はほかにないのだろうね。
 個人的には第1章「文化と組織」,第6章「結論」が,理論的でまとまっていて読ませる。ただ,おそらくこの本の醍醐味はその間のエスノグラフィーの部分なんだろう。
 企業に勤めている人間からすると,そんなに目新しいことは言っていない気もする。あと,企業文化,組織文化を否定的にとらえすぎているようにも感じられる。好みだろうが。
組織エスノグラフィー ★★★★★
本書は”組織エスノグラフィー”という手法で組織文化論が記述されている。一見、なかなか読みにくいという印象をもったが、それは、まだまだ日本の経営学書において、"組織エスノグラフィー”という文献が少ないことによるのだろう。しかしながら、組織文化の理解に勤めようとする人間にとっては、この"組織エスノグラフィー”という手法は欠かせないものと思える。なぜならば、組織文化とは定量的に図れるものではなく、人間の集団にうごめく文脈を読み解く作業が必然的に求められることから定性的なアプローチがもっとも適していると思える。そのことを解らしめてくれたのが本書である。巻末の金井教授の論評を読めばより一層そのことが理解されるであろう。(恐らく、金井教授の論評を先に呼んでから、本文を読みはじめる方がより一層理解が深まると思う。)いずれしても、組織文化に関して何がしか関心のある方にはお勧めの一冊といえる。
組織研究の必読書 ★★★★★
 本書は組織社会学や経営学、組織文化論の研究者にとって必読書である。
アメリカ社会学会の文化部門書籍賞を受賞し、今や世界的に認められている
組織におけるエスノグラフィーの代表作のひとつ。
 これまでも組織において参与観察研究は多く存在するが、本書の独創的な点として、
①(これまで主流であった機能主義に対して)解釈主義に基づいた組織文化の分析
(経営側だけでなく組織成員における文化実践の分析)、
②(これまでの組織論ならびに組織文化論で見落とされていた)組織における
感情実践の分析、が挙げられる。
伝統的に機能主義に偏向し、また感情を分析対象から排除してきた経営学徒は
自己反省のためにも読むべき研究。

 なお筆者のギデオン・クンダは組織社会学者ヴァン=マーネンMIT教授の弟子で、
現在Tel Aviv大学の労働論助教授。

 翻訳は、忠実に訳せているほうだとは思うが、一部誤訳が見られるので注意が必要。
邦訳タイトルとは原題と大きく異なる。タイトルから想像されうる一般向けの
ビジネス書ではないので一般の読者の方は注意が必要。
かなり専門的な組織社会学的研究書である。