林直樹氏はパーソナリティ障害の権威。
パーソナリティ障害についての臨床的な見解は専門家においても相違があるのが実状。
そうした事情のうえで、本書は、特定の立場に偏らないようにし、その障害の全般的な理解
が得られる工夫がされている。
本書は臨床家を対象にした入門書であるが、一般の人にもぜひお読みすることを薦めしたい。
わかりやすく丁寧に書かれてあるので、読めないこともないと思う。
一般向けに書かれたパーソナリティ障害の解説書が多く出版されていますが、はっきりいって
お薦めできません。
林氏は本書で述べられているように、パーソナリティ障害を診断するには、相当な慎重さが
求められるという。人権を侵害しかねないものであり、人格を尊重する特別な配慮が必要で
あるという。そうした姿勢は本書において一貫している。その点がそうした類の書とは全く
違っている。
臨床的な話になるが、パーソナリティ障害の患者さんから受ける激しい陰性転移にさらされ、
治療者は守るべき枠組みをしっかりと保持しなければならない。これが基本である。しかし、
これを行うことは非常に困難である。そればかりでなく、その対応は一様ではなく、多種多様
であり、工夫しなければならない性質のものである。
臨床家はこの障害の治療の困難さを知っている。林氏は本書で、この障害の治療が臨床家とし
て腕を磨くための必須のひとつであるといっている。
本当の意味で、臨床家になることは本当に厳しいものであることがこの言葉から窺える。
本書を読めば、氏の、「ある確かさ」を感じることができるであろう。その確かさが
治療の根幹となっているのではないか。
本書を専門家のみならず、一般の人にも読んでいただきたい。
適切なパーソナリティ障害についての理解を得ることができるであろう。

パーソナリティ障害についての本はそれこそ山ほどありますが、結構、怪しいものが多いのが現実。患者さんが読んでがっかりしてしまうようなものも多いのです。その点、林先生の本は一押しです。豊富な臨床経験と誰よりも幅広い知識で、懇切丁寧に書かれてあります。パーソナリティ障害について基礎知識を身につけたい人は、まず本書を読むことをお奨めします。正しく理解していないと、ここまでまとまったものは書けないという好例です。