日本人の顔
★★★★★
「深夜食堂」にはまって、「山本耳かき店」へたどり着きました。私は自分の耳掃除も大好きだし、わが子の耳掃除も大好きだったので、耳かきの気持ちよさ(掃除するのもされるのも)が漫画になって、なんだか自慢したいような気がします。耳かきを仕事にする気持ちが半分わかります。ただ、オットの耳や他人の耳は覗きたくないので、やっぱり自分の仕事にはできないでしょうね。他人だったら10歳までかな。
安倍夜郎さんのさっぱりした絵とせりふの少なさがとてもいいです。こんなにさっぱりした絵なのに、言うに言われぬ気持ちがあふれ、色っぽさが伝わります。これは小説では表現できない、漫画ならではの表現ですね。
安倍さんの描く山本さんは明治から昭和初期に活躍した小村雪岱(日本画家、舞台装置家)の描いた女性と雰囲気がよく似ています。日本人の顔ですね。
印象的な作品
★★★★☆
この作家さんのデビュー作、投稿作品だったと記憶しています。
雑誌で新人賞を受賞し、選者が絶賛していたので興味を持ち読みましたが、絵柄と『耳かき店』という設定が印象的で、これが新人の作品かと驚いてしまいました。
どうやらこの方は40歳を過ぎて漫画家を目指されたそうで、そこまでの間に蓄積された漫画以外の要素が、作品全体に流れる不思議なトーンの素なのかなと思います。
老年のブルースマンの歌が、上手でなくても何とも味わい深いような物…と書くと失礼に当たるかもしれませんが(設定やストーリーはかなり試行錯誤なさるようですので)、全体に連載用にカジュアライズされた『深夜食堂』とは別の視点で楽しめる作品集と思います。
甘美、淫靡、耽溺の世界
★★★★★
女性に膝枕してもらう。そして耳かきをしてもらう。
何と甘美な時間であろうか……
まさに淫靡、耽溺。
膝の上でこりこりしてもらう恍惚の時間の最後に、
耳かきの反対側についているぼんぼんで耳穴をやさしく撫でてもらい、
「ふっ」と息を吹きかけてもらう。
官能が全身を駆け抜け、我が精神は何ものかから開放され涅槃に入る。
耳かきに一種のフェティシズムを感じる方にはこれほど素晴らしい本はない。
しかし、そうでない方にはこれほどつまらない本もない。
まあ、これはこれで、という内容です。笑
★★★☆☆
安倍夜郎だからこそ許された(許されているのかわかりませんが)漫画です。
ストーリー性、ドラマ性などを求めてはいけません。
結局、この絵柄が醸し出す雰囲気、これを読みたい人だけが買うべき一冊です。
耳かき好きならもだえる漫画です
★★★★★
内容も面白かったけれど、描写がすごい!そのマニアックさに圧巻!
耳かき好きなら、一度は自分の耳の中が一体どうなっているのか知りたいと思ったことがあるはず。
そのもどかしい程の欲求を、抒情的にそして官能的に満たしてくれるすごい漫画です。
恥ずかしいのですが、読んでいて何度も身をよじったり、身震いしてしまいました。
昭和レトロな絵柄もまたよくて、のっぺりした女主人の菩薩のような表情や、絶妙な手のしぐさ、耳かきがしなる…、三半規管をバイ貝に例えるなども耳かき好きには本当にたまらない描写です。
ヴィレッジヴァンガードで購入したのですが、レジの店員さんに「この本面白いですよ」と言われたのが印象的でした。よっぽど耳かき好きだったのかしら(笑)
耳かき好きには絶対おすすめの一冊です。