王道
★★★★☆
大ブレイクしたバンドにありがちなメンバーの脱退を乗り越えての新作だが、少しAOR化しすぎたかな?という感があった前作よりもずっと自然な出来上がり。相変わらず曲も粒揃いで最後まで飽きずにじっくり聴ける味わい深いアルバムだ。
静かな始まりから、徐々に緩やかで壮大な盛り上がりを見せる@、疾走感溢れるアメリカンロックのA、E、F、UKロックでは絶対に味わえない(笑)枯れたギターが印象的なG、L、物悲しい旋律を持ったHなど聴き所は沢山。アルバムの最後を飾るに相応しい力強いメロディを持つMを聴き終えると、自然に@へとリピートしてしまう。
しばしば『アメリカンロックの良心』と評される彼らだけど、『音楽界の良心』といっても良いくらい、ひたすら良質なメロディ、演奏、歌唱を追及した正統派バンド。マーケティングやファッション、話題性に頼ったバンドが多い中、この実直さが却って個性的なのかも。
ちなみにプロデュースは前作同様アメリカンロック界の大物、ブレンダン・オブライエン。それだけにサウンド面でも言うことなし。
苦難を乗り越えて
★★★★★
相次ぐメンバー変更やボーカル、パット・モナハンの離婚や友人の死を乗り越えての4作目。
今回のアルバムはそうしたパットの心境がそのまま曲になったと言っていいと思う。
今までと同じトレインの心地よいメロディーはそのままに、メンバー交代さえも全く感じさせぬ彼らの成長がうかがえる秀作。
地に足の着いた渋い力作
★★★★★
地道なツアーでたたき上げられた鉄壁のサウンドと強靭な精神に支えられ、「ドロップ・オブ・ジュピター」で大ブレイクした彼らも、既に本作ではベテランの域に達したかのような渋い味をアルバム全編に出し始めた。
すでにバンド創設メンバーの2人が脱退した上に、ヴォーカリストのパットの離婚・親友との死別などというさまざまな出来事を経過して本作が制作されている。
本作のなによりの特徴は、歌詞にある。失恋、家族、死など、極めてパーソナルな題材がパット・モナハンによって丹念にエモーショナルに歌いこまれている。これは彼らの自然な現在の心境を反映しているのだろう。一時の成功と言う熱狂からも脱し、よりピュアな感性で作られた味わい深い作品だ。
「僕にとっては、それが君なんだ」という素晴らしく印象深いタイトルトラックと、静かに盛り上がり、最後は流麗なストリングスとともにメロディックに盛り上がる1曲目の素晴らしさに心奪われる。
渋くはあるが豊潤で味わい深い彼らの歌をジックリ聴いてほしい。アメリカの良心とでも言いたくなる素晴らしい作品だ。