やや特殊な体裁の本
★★★★☆
モノグラフと言えるほど伝記の体裁はとっておらず、C・D・フリードリヒの代表作の一つ《氷海》について、美術史の基本的な作業の結果が書かれている。《氷海》をどう分析しているかというと、ある特定の分野による攻め方ではなくて、非常に多岐に渡る戦い方をしている。単純に氷の図像が持つ意味から迫ってみたり、フリードリヒの持っている政治的状況に触れてみたり、フリードリヒの触れていた自然科学の知識から切り込んでみたり、といった感じだ。
フリードリヒという画家に興味を持ち、簡単なモノグラフを一冊読んだ後の、専門書へ向かう前のワンクッションとしては最適かもしれない。また、仮に《氷海》をテーマに大学のレポートを提出するならば、この一冊を読んでおけばかなり楽に書けるだろう。