競輪選手への第一関門、競輪学校への合格を目指す２人を数年間にわたって追いかけたノンフィクション。倍率は７〜10倍、受験機会は年１回（当時）ということで「東大に入るよりも難しい」と言われる競輪学校だが、なるほどその道程は厳しい。２人のうち高卒後に競輪学校を目指した１人は学科試験という壁にも阻まれ、なんと７回目の受験、年齢制限ぎりぎりでの漸くの合格。もう１人は大卒時に受験するものの不合格となり一般企業でのサラリーマンの道を選択することになる。
師匠と弟子、兄弟弟子どうし、日常のロード練習、バンク練習、希望と焦りと絶望とがない交ぜになった日々…「ギャンブルレーサー」にも半ばギャグを交えながら描かれたところだが、対象に迫っていく取材力と真摯な筆致からまるで彼らの肉声が聞こえてくるかのようだ。
それにしても「取材対象が合格しなければ日の目を見ることもなかった」と筆者自身が語るこの企画に対して数年間もの間モチベーションを切らさずにあたり続けた筆者にも頭が下がる思いである。
ちなみに合格した姿が描かれている森川剛（89期）は現在、神奈川所属のＳ２レーサー。博打に私情は禁物とわかっていてもついつい彼から買ってみたくもなってしまうのは当然の理か。