独特な非日常的世界にひたる
★★★★★
表紙の二人は今風な出で立ちですが、舞台は一時代前の架空の日本。(これは仕事をする時のアイテムを見れば何故架空にしたのかが分かります。)ですので登場人物達の言動は“もののふ”の雰囲気が漂います。様々な派閥が対立し抗争を繰り返している世界のようですが、余り詳しくは語られません。この話にはもう一つテ−マがあってそちらが主題になっているからです。できれば複数の巻で掘り下げて欲しかったなとも思います。ですがそれ以上に魅かれたのは、二人の関係性です。互いに本音を隠しながら三年間を過ごし、それぞれに秘めた思いがある出来事をきっかけに徐々に明らかになってくる、その見せ方が特徴的な作画と相まって、心をわしづかみにされました。萌えがありました。ですが、それは今ある居場所を失うことでもあったので、その後の描き下ろしでの二人はまるで道行のよう。悲劇的な結末をむかえるかもしれない、でもそれは誰にも分からない...そんな切なくなる終わり方。もう、本当に堪能させてもらいました!
独自路線
★★★★☆
表紙のカラーイラストと、本編のモノクロを強調した硬質な画風がかなり違うのは、前作『今夜はテイクアウトにて』同様です。
今回はまるごと一冊、ある政治家の私設警護組織を舞台にしたお話。読みごたえはありましたが、正直、最初は独特のタッチに読みづらい……と感じました。この辺りは好き嫌い分かれるなーと思います。
ただ、これが作者の個性。切ない……と言うより、やがて来る悲劇的な何かを内包した刹那の愛、みたいな話にぴったりくるんですよね、この作者さん。 そういう意味で、書き下ろしの短編は雰囲気あって良かったです。
前半、やや時代背景や設定がわかりづらく、組織内部でのみ話が進むので、説得力に欠けるかな?と。
その分★マイナスにしましたが、貴重なオリジナリティ、伸ばしていって欲しいです。