フルカラーで見やすい概説書
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キリスト教絵画は主に聖書の一場面を静止画で表現したものだが、その図像は多くの「約束事」で成り立っている。例えば時間の経過をいかに1枚の絵に盛り込むのか、あるいは造形が禁じられていた「神」をどのように描くのかなど、それらは数え上げればきりがない。
この本は、聖書や聖人伝からよく取り上げられる場面について、まず意義と関係する場面を紹介し、次いでその場面の代表的な絵画を紹介して図像のポイントを説く。絵画は各場面1点だが、古代から近代まで幅広いものが取りあげられており、絵画史の一端も辿ることができる。フルカラーの割りに手ごろな値段なのも嬉しい。
ふつう入門書は内容が希薄になりがちだが、この本は各部分とも1~2ページの中で重要な点を要領よく説明している。場面に関連した内容を小枠で紹介するコラムも大変充実しており、読み物・概説書としても通用する。