ツバルの現実をあるがままに
★★★★☆
環境問題関係の本ですが、写真とメッセージで「あるがまま」のツバルの姿が映し出されています。環境問題について、「先進国が悪い」「二酸化炭素の排出がとにかく問題なんだ」というような一面的な見方で何かを糾弾するのではなく、たんたんと事実を描き、その中で子供達の笑顔と現状を綺麗なフィルムにおさめてくれています。こういう本がたくさん出てくれると環境問題について色々と考えてくれる人が増えるんじゃないかなと個人的に期待しています。
さて。
ツバルですが、このツバル諸島というニュージーランドにほど近い国は、地球温暖化による海面上昇で世界で一番早く沈んでしまう国として有名です。事実、この本にはその事実を示す写真がたくさん出て来ます。島の沿岸のヤシの木が土壌ごと海水の上昇によって海にひきずりこまれてゆき、年々国土がなくなってゆく光景。街中の各所で地下から海水が溢れて来て(これは島が巨大な珊瑚礁の上にあるという事も関連しています)農作物が育たなくなっていく光景。海水の侵食でゴミ処理場や農場の家畜の糞尿をあたりにばらまかれ非衛生的になってしまっている光景。それらの中で無邪気に遊ぶ子供達。
考えさせられる部分がたくさんありました。自然の景色があまりにも綺麗だから、あまりにも自然が圧倒的なところだからこそ、彼らは自然と対決する、自然と闘う、自然を組み伏せるなどという事は考えていません。国土がなくなるならば、ニュージーランドに土地を買おう、そこに移住しよう。自然にはあらがえないからと思っています。それはそれで一つの考え方ですが、果たして一つの国がなくなるということに他国がその原因の一つを作っているとして放置しててよいものでしょうか。目をつぶってしまってもよいのでしょうか。
勿論。
日本が関西電力が巨大な太陽光発電所を設置したのをはじめ、諸外国や環境問題のプロたちはこのツバルを環境問題の一つの重要なわかりやすいトピックとして取りあげてきましたが、それが逆にこの島に変に西洋文明的なものを送り込んでしまった側面もあります。また、あかにも環境問題としてこの国を悲惨な国の代表のように取りあげるのもこの国からすればありがた迷惑な話でしょう。
だけれども、彼ら昔に戻った暮らしを要求するのはナンセンスだし、その中でなんとかできることを探るのは我々に課せられた義務のような気がします。
そして、それをこんな堅苦しい文章で訴えるのではなく、写真だけでやってしまえるのがこの本です。