命をかけた駆け引きのスリル 文句なしの満点
★★★★★
1954年に初めて発表された本書。200ページに満たないボリュームながら、密度の濃いスリリングなノワール小説です。善意が必ずしも報われることのないこの世で苦しむ主人公の心理を通じて、世の中や自分の価値観について考え直させてくれます。しかし!本書の一番の楽しみはなんといっても、人の心の動きを読み取るのに長けたボスと主人公の駆け引きです。自分の心を読ませまいとうそをつき、演技することがだんだんと主人公を追い込んでいきます。愚鈍としかいいようのない女にほれ込んでいるボスと、不運な運命にもてあそばれる女に同情し愛しはじめる主人公、そして主人公の過去、これが最後に主人公の運命をきめることになります。ここからは先ネタばらしになってしまいますので、控えておきます。とにかく面白くて密度の濃い小説です。オススメ。