みんな死んでいる。でも「生きる」ことについてのお話。
★★★★★
きらの新連載「僕らはみんな死んでいる」第一巻。
主人公たちは、みんな死んでいる。
死んだ彼らが「神」と名乗る者により
生き返る権利をかけて、ある「ゲーム」を行うことになる。
年齢、仕事、性格、趣味、死因等々…
個性バラバラのメンバーで行われる「ラブ・ゲーム」とは?
果たして、一体誰が生き返ることになるのか?
あらすじはこんな感じである。
見ず知らずの人間が同じ空間で、
謎の強者に「ゲーム」を強いられる。
最近の漫画の流行なんだろうか。よく見られる設定である。
その手の作品は主にロジック性やスリル性が中心となるものが多いが、
本作はどうだろうか。
ファンの皆様、安心していただきたい。
これは、しっかり女性用の作品としてのアレンジがなされている。
今回はきらのオリジナル作品。
ゲームはゲームでも「ラブ・ゲーム」、求める物はお金でも名誉でもなく、「命」のみ。
ギスギスした雰囲気がないわけではないが、
そこかしこで、きら特有の人間の生活感や温もりを感じることができる。
作者本人は前書きに「死ぬって何?」がテーマだと述べている。
既に死んでいる人がまるで生きているようなまま、
現実では絶対に不可能な設定で「愛」と「生」と「死」について描かれていく。
それはとても優しく、非常に人間らしい空間で、愛おしさすら感じるほどである。
漫画技術・特徴に関しては、
1.無表情でも伝わる静止画の感情描写力、
2.読み手に一切のストレスを感じさせないコマ割のスムーズさ、
3.(特に同年代の)女性の共感を得られるであろう女性キャラの存在、
4.必ずしも格好よく描かれないがその分良い味を出す男性陣、
が作者の持ち味であると私は感じている。
私の大好きな少女漫画作家の一人である。
その力量は今作でもしっかりと見てとれる。
安心して読める作家だからこそ描けたやわらかな死者の世界。
まだ一巻しか出ていないのだが、
以上に述べた長所から、この作品は大変期待できるものである。
最後の見開きページで更に加速するストーリー展開。
そこからあなたは続きを推測することができるだろうか。