ホロコーストから大勢のユダヤ人を救った、知られざるスウェーデンの外交官
★★★★★
先日読んだ大河スパイ小説「影の兄弟」は、ドラマとしてはいまひとつ(いまふたつ?)だったが、”歴史の教科書”としては、知られざるトピックスをいくつも紹介してくれて、なかなかおもしろかった。その1つがラウール・ヴァレンベリ。大勢のハンガリーのユダヤ人をナチスのホロコーストから救ったが、ソ連に捕らえられて十中八九殺された、スウェーデンの外交官だという。
ホロコーストからユダヤ人を救った非ユダヤ人は、オスカー・シンドラーと杉原千畝はよく知っているが、ヴァレンベリなる人物は恥ずかしながら全くの初耳。そこで興味を抱いて調べてみたところ、本書の存在を知り、読んでみた次第である。なお、”ヴァレンベリ”は”Wallenberg”のスウェーデン語読みで、英語読みにすると”ワレンバーグ”になる。
本書は児童書だが、児童書としては非常にレベルが高い。ホロコースト全般、ハンガリーでのホロコーストの状況、そしてワレンバーグの活躍について、きっちりと要点を押さえて、わかりやすくまとめている。特にワレンバーグの活躍は、小説顔負けのスリルとアクションに満ちていて、ハラハラドキドキ楽しめた。大人でも、ワレンバーグについてほとんど、あるいは全く知らない人間なら、十二分以上の読み応えがある。
たとえば、コラム的に紹介されている、ホロコーストの生存者ロン・ベイカー教授のコメント『人間というのは、人をにくみたがるものです。そうすることで自分は正しいと思い、気分がよくなるんですね…そして、自分たちの怒りや敵意をあらわにするためには、身代わりとなる犠牲者が必要となります…』には、児童書だからとあなどれない深みがある。