久しぶりにこのCDを聴いて感動してしまった。ヴィターリの「シャコンヌ」はいくつかの名演奏がある。情熱的に歌い上げるシェリング、冷静に坦々と弾きながらその中に万感の思いを込めるミルシティンなど。海野は音符の一つ一つをおろそかにせず、楽譜通りに、一見ミルシティンのように坦々と演奏しながら、その符間に「日本人の心」を込める。いまや海野よりじょうずに演奏する日本人は幾人もいよう。しかし、海野ほど西洋音楽に矛盾なく日本人の魂を込められる人を見たことがない。「シャコンヌ」以外の曲も同様に日本の心を味わえる演奏で、全曲を聴いているうちに、粛々とその感動が胸に伝わってくる。
聞き終わったとき、心から日本は、この人を、この演奏を大切にしなければいけないと感じた。いまだ真の演奏スタイルが固まらず、西洋かぶれから抜け出せないでいる日本人演奏家の目指すべき答えが、ここにあったではないか!!
なお、海野の得意とするモーツァルトのヴァイオリンソナタを全曲聴いてみたい。まだ企画がないのなら是非検討してCD化してほしい。