普通のおばさん漫画になってしまいました(統括です)
★★★☆☆
急逝した原作者の後を引き継いで続行された『味いちもんめ』でしたが、
独立編になって現在のスタッフの色がかなりハッキリと出てきたように
思います。
当初は、独特である板前の世界を基軸に人情話と料理を掛け合わせた話
から始まって、やがて社会批判や時代描写を組み合わせた、よろずもの
へと変化を遂げ、人気作となり、一雑誌の看板作にまで出世しました。
そこに元々の原作者が急逝してしまうアクシデントが発生。幸か不幸か、
作品世界の構成が作画と二人三脚であったことから、原作者を交代させ、
異色の板前サラリーマン漫画へと路線転向。
何とかそれで凌ぎつつ、徐々に作品の基軸を、再び職人としての板前の
生き方へと、戻しました。その中で、元々の原作者と作画が創り上げた
数多くの魅力的なキャラクターや舞台のほとんどを切り捨てるといった
無茶もしています。
(逆に言えば、描けないものは素直に諦める、そんな潔さがあったのか
も知れません……しかし、今の原作者と作画が創り上げたものものまで
あっさり破棄してしまうのはどうかと)
それでも、今の漫画業界が持つ大きな空気の一つ、人気作はいつまでも
人気作、という変化を嫌う時代の空気に支えられ、独立編へと変化を遂
げ、遂に三巻まで来ました。
*
前置きが長くなりましたが、ここに来て冒頭に申し上げた通り、現在の
作り手側のカラーがハッキリとして来たように思います。
以前はおじさん漫画と揶揄される作風であったものが、今度は一言で表
すならば「おばさん漫画」とでも呼ぶべきか、そんな作風になったと思
います。
今までの人気に支えられている部分を差し引くと、決して悪くはないの
ですが凡作であることは否めません。
この作品を初めから通読すると、よく時代を読み、そして表していると
気づかされます。かつ、元々の原作者が急逝してからここまでの歩みも、
舞台裏まで見透かすことを条件に見てみれば、これもまた時代をよく表
してきたと思います。
そろそろ、この流れも終演を迎える頃に来ているのではないでしょうか。
*
追記:主人公の伊橋は次から次へと、恋人未満友人、なんて女性を取っ
替え引っ替えあてがわれてきました。その為か、もう年齢不詳な
状態になってしまっていますので、最終回までには、何とかお嫁
さんをあてがって欲しいと思ったり……。