邪悪で野蛮で官能的なブラックメタルの良作!
★★★★★
スウェーデンのブラックメタルバンド、WATAINの2010年のアルバムです。Venom、Bathoryのミドルチューンにある野蛮さと、Dissectionの美しいメロディと展開を受け継いだようなアルバムだと思います。ブラストが少なめでスピード感にあふれてるわけでもありませんが、悪魔的パワーの漲る、とても良いアルバムだと思います。
前作SWORN TO THE DARKでは、冷たく疾走するトレモロピッキングと低音のミドルリフの使い分けや、低音と高音のメリハリの効いたクリーンな音質、徐々に盛り上がっていく展開で、儀式めいた暗黒の世界を感じさせましたが、このアルバムでは方向性を若干変えて来ました。
ミドル〜すこし速めのリフは、ザクザク刻むのではなく、非常にシンプルで、古典ブラックメタルの、血塗れの斧を振り上げて「ヘイル!」と雄たけびをあげるような野蛮な高揚感があります。これを基盤に、そこにブラックメタルらしい邪悪なトレモロピッキングリフや冷酷で官能的なメロディが加わって、ドラマティックな悪魔賛歌を作り上げています。音質は、前作よりも低音が軽めですが、それが生生しく魅力的に感じられます。
クラシカルであったりブルータルであったり神秘的であったりという側面が期待されがちな風潮の中で、過剰な攻撃性を廃しながら、わきあがる血と邪悪な躍動感を蘇らせ、その上で怪しく美しいメロディも奏で、素晴らしい展開で感動もさせてしまうのは、なかなかの個性だと思います。
激しさはありませんが、蛮勇と官能のブラックメタルのエッセンスが凝縮されています。暗闇で拳を振り上げて「ヘイル!ヘイル!」とやりたくなります。
メタルに邪悪なパワーとドラマを求める人にオススメです。