クラシックギターのイメージを覆す一枚!
★★★★★
若手トップの実力を持つと評価の高い木村大のデビュー10周年を記念した作品だそうです。
スピード感溢れる爽快な演奏で有名な彼ですが、10代でのデビューから早くも10年、
どのようなギタリストに進化しているかと思い、ふとこちらの作品を手に取ってみたところ…
10曲中オリジナル曲4曲?しかもチックやピアソラの曲なんかも入ってるし…
とまあそんな具合に、クラギのレパートリーを弾くだけにとどまらない、
フロンティア精神溢れる個性派ギタリストになっていたのでした。
実は私は純粋なクラシックギターのファンではなく色んな音楽を聴くタイプの人間なので、
クラギ1本のアルバムを通しで聴くと、ダルくて最後まで聴けないんですよね(笑)。
けれどこちらのアルバムはバラエティ豊かな曲目と素晴らしい演奏のおかげで、
そんなことなく最後まで一気に楽しんで聴けました。
中でも、個人的に今回が初めてというオリジナル曲がとてもお気に入りです。
曲は最近Youtubeなんかでも人気のソロギターのインストのような明るく爽やかな雰囲気ですが、
これが彼の粒立ちが明快で輪郭がはっきりした演奏と合うこと合うこと。
先入観がなければ最初からこっちの人なんじゃないかと思ってしまうほど相性抜群です。
これは他の曲についても言えますが、この彼独特のタッチは聴いてて胸焼けしないんですよね。
オリジナルのような明るい曲やスピード感のある軽快な曲に関しては言うまでもないですが、
メロウな感じの曲でも変にしつこくならず、あくまで儚げに響くところが面白いです。
このような多彩な活動をしている演奏家(他にどれだけいるかは知りませんが)に対し、
純粋なクラギファンはどのような印象を抱いているのか私には分かりませんが、
どのような高名な演奏家でも、やはり個性がある以上曲との相性の良し悪しはあると思います。
その意味で、こういったアプローチは彼の個性に合っているのではないかと感じました。
また、そのような方向へ敢えて進んだ彼の志にも拍手を送りたいと思います。
この作品は是非色んな音楽を分け隔てなく聴く方に聴いて欲しいですね。
クラギ慣れしていない人にも良さが伝わる1枚だと思いますので、買って損はしないと思います。
こういう作品が一杯あれば、クラギを始めたいという人も増えるんじゃないのかな?