気分を良く掬い上げている
★★★★☆
夏目漱石『それから』の代助のようなモラトリアムは
かつて青年男子の専売特許の感があったが
本書を読むと、現代においてそれは
完全に20-30代女性の代名詞のようだ。
論理的・統計的分析は無いが
小説も含め、その気分を良く掬い上げている。
電車帰りに読みました
★★★★☆
さまざまな個性の女性が出てくるので
こないだ一緒に夜ご飯をともにした後輩の女の子に読ませたい、と思った。
だって彼女は残業が立て込んでたその夜、休憩に出たスパゲティ屋でホワイトクリームをからめながらこう言ったのだ。「一人暮らしの女性って普段仕事のあと、何してるんだろう…」
毎晩、帰りの電車で読むにはぴったり、でも内容なんか物足りないです。
柴崎レポート
★★★★☆
全26話のインタビュエッセイ「ガールズファイル」と
全13話の連作短編「毎日、寄り道」の2章構成。
副題の「27人のはたらく女の子たちの報告書」は、26人のレポートと、短編の主人公で合計27人なのかな?
「ガールズファイル」では、今まで一度も彼氏ができたことがない二十四歳、わがままなお嬢様、チアにはまる女性…などなど、年齢も職種もまるで違う、でも働いているという観点では同じの26人の「彼女」たちの日々の生活を、インタビュを経てエッセイという形で綴られる。
話の中心はさすが女性が女性に聞くあたり恋愛に重きを置いた話が多い。
じっさい周りに居る居るそんな子、とかあるいは共感出来る人も多く居るのではないだろうか。
各話の頭では、インタビュ対象の女性の紹介を、導入的なコメントが入る。
「転職なんて言葉もあるけれど、やりたい仕事と向いてる仕事はまた別だし、好きなことを目指すだけが、自分に合った仕事を見つけることにつながるわけじゃないとも思う」本文117ページより
とはいえ、インタビュを挟んでいるためか、居心地が悪い時間も多々あった。
柴崎友香の最大の魅力は、何と言っても後述「毎日、寄り道」のような何気ない日常を、独自の視点で切り取り、優しい視点で表す圧倒的な表現力である。
残念ながら、こちらではその魅力が明らかに半減していた。
一方「毎日、寄り道」は柴崎友香節が全開で、心地よく読み進められた。
かつて同じマガジンハウスから刊行された「フルタイムライフ」に雰囲気が非常に似た作品。
営業事務のOLの日常を追う世界は、何気ない毎日や会話をやさしく丁寧に切り取って、彼女独自の表現であらわしてくれる。
「ああすればとかこう言うたらとか…、仮定っていうやつ?そういうのはこれから先のことに使うんちゃうんかなって、最近思う」 ―毎日、寄り道―本文168ページより