初めの論文はインフォームドコンセプトとパターナリズムのせめぎ合いを題材にして、日本医療を取り巻く状況と医療関係者の気質について分析しています。ここでは法学的観点だけでなく社会的要因、経済的要因も考慮されています。96年時点での医療界についてはこれでかなり分かると思います。ただしこの後の数年間で状況はかなり変化しており、この部分だけで現状を把握する事は出来ません。
それをカバーするのが二つ目の論文です。このおかげで日本の医療はこの数年間で何が変化し、何が変化しなかったのかを知ることが出来ます。
流し読みするには重いテーマです。初めに読むときは 序→第4章まとめ→「21世紀に入って」の順番で精読してみて欲しいものです。これだけならたいした量ではありませんが、十分に著者の主張は理解できると思います。その後に、古い題材が混じっていることを承知しつつ、残りの章を読むとわかりやすいでしょう。
現在の医療界はどのような過去を踏まえているのか?次にどのような方向に進んでいくのか?と言うことを考える上で非常に参考になる本です。
一般向けでとても読みやすく、感動しました。