面白い戦国ダーク・ファンタジー
★★★★★
わずか200名が守る沼の中の城を、1000名で攻める。
主人公は癖のある10名程の配下を率いて城を攻める”久四郎”という小隊長。
(とはいえ、部下の食料も借金で工面しており、如何に安く上げるか、まで気を配らねばならない!)
中盤過ぎまで3日ほどの城攻めの一進一退の肉弾戦的攻防を久四郎隊をメインに克明に描いてみせる。
城側は城主は戦死しているのだが、代わりに北条から派遣された切れ者”玄信”が火器を擁して
差配しており、攻め側を翻弄、時には逆夜討ちを仕掛け、数的劣勢を覆し、戦いを均衡まで押し戻す。
この過程で、一人、二人と配下を失って行く久四郎隊。
中盤から終盤には和議を巡るイザコザが勃発、15年前の因縁から和議団に指名される久四郎、
城内部の内輪揉めとも相まって、ここでも肉弾戦が息つく間もなく繰り広げられる。
(本当、読むほうも息つく暇がない)
最終盤には、この唐突な城攻めの真相、女城主をめぐるどんでん返し、さらには内通者の発覚、
などサービス満点、全編を通して適度な皮肉と小隊長の悲哀感が漂う。
(難点というほどでもないのだが、チョッと城の内部の配置が分かりにくい。これもう少し
明確になれば、さらに戦いがイメージしやすくなると思うのですが...それと内通者の登場が
チョッと唐突か..)
面白い本にも好き嫌いはあるんでしょうが、戦国物語ではあるが、米戦争映画「ライアンを探して」
(トム・ハンクスが小隊を率いる後半部分)とか、古いけど米TV「コンバット」(サンダース軍曹の奮闘)を楽しめる方には
好適かも...
ひょっとすると、直木賞は...