最高のドキュメンタリー
★★★★★
フルトヴェングラーの戦後復帰初の演奏会です。
田園は落ち着いた演奏で、スケールが大きいです。2楽章でフルトヴェングラー特有のアチェランドがかかるところは不意を突かれます。最終楽章は祈りにも似た崇高さを感じさせます。運命は熱気むんむんの演奏になっています。楽団員が意気込みすぎて、運命の動機でフライングしたり・・・アンサンブルは完璧ではありませんが、フルトヴェングラーも楽団員もここで演奏できる喜びを爆発させています。かといって、激しいだけの演奏ではなくて、うたわせるところは本当に美しいです。そして、最終楽章で歓喜が爆発します。60年の時を越えて、感動が伝わり、心が揺さぶられます。
音に関してはかなりいい部類だと思います。残響が少なく、ちょっとデッドに聞こえますが、各楽器の音色があり、息遣いが聞こえてきます。同じデルタレーベルの27日の演奏が低音が若干モコモコしているのに対して、わたしにはこちらの録音のほうが、すべての音域で音が明瞭で、実在感を感じます。
戦後復帰初のライブ
★★★★★
ライナーから
”不幸にもナチに利用されてしまったフルトヴェングラーは、ドイツ敗戦後ナチに加担した「戦犯」としてドイツでの一切の演奏活動を禁じられました。終戦からこのドイツ国内で復帰演奏会を行うまでは裁判にかけられるなど非常に苦しい時期を強いられました。
1947年5月1日に「完全無罪」を勝ち取ったフルトヴェングラーは、晴れて手兵ベルリン・フィルと復帰演奏会を行うことができ、ベルリン市民は待ちわびていたのか、コンサート・チケットは瞬く間に売り切れたという伝説的な復帰コンサートとなりました。
フルトヴェングラー自身がこの歴史的復帰演奏会に選んだのはオール・ベートーヴェン・プログラム。『エグモント』序曲、『田園』、『運命』という十八番中の十八番を揃え、終わりに『運命』をもってくるあたりは、苦悩から歓喜へと至る曲の進行に復帰コンサートにまでの自らの心情を重ねたようでもあります。”
歴史的な意味合いの高い一枚です。
音質は残念ながら、他のフルトヴェングラーの市販されているCDと比べると、少し悪いようですが、熱狂的雰囲気の伝わってくる一枚です。
歴史的瞬間の記録
★★★★★
W.フルトヴェングラーは、1945年5月のドイツの敗戦後、連合国軍によって一切の指揮活動が禁止された。ナチス協力の容疑がかかっていたのである。その後、ベルリンでの審理の結果、フルトヴェングラーはナチスに協力的ではなかったことが立証され、1947年5月25日(日)の聖霊降臨祭において、戦後初めてのベルリン・フィルハーモニーとの演奏会を持つ。会場はもともとは映画館であった、ベルリンのティタニア・パラストである。演奏曲目は、すべてベートーヴェン作曲で、はじめに「エグモント」序曲 作品84、続いて交響曲第六番ヘ長調「田園」作品68、最後に交響曲第五番ハ短調作品67。この演奏会はベルリンに未曾有のセンセーションを巻き起こした。戦後の廃墟のベルリン、疲弊した人々はフルトヴェングラーの奏でる至高の芸術に、魂の救いを見出したのである。演奏会場からは、終演後も人々が退場せず、「われらが指揮者! われらが指揮者!」というシュプレヒコールを続けていた。まさに歴史的瞬間である。
このCDは、まさにその日の演奏会のライヴ録音である。残念ながら「エグモント」序曲の録音は残っていないが、そのほかの演奏は、良好な音質でここに収録されている。フルトヴェングラーも、ベルリン・フィルハーモニーの楽団員も、音楽できることの喜びに浸りきっている。その分、少し音楽が先走り、崩れている部分もあるが、音楽に対する尽きせぬ愛と喜びの圧倒的な力の前には、そのような些細なミスなどとるに足らぬ。このベルリン・フィルハーモニーへの復帰演奏会は、同じプログラムで幾度か行われ、5月27日の演奏もライヴ録音として残っている(こちらは「エグモント」序曲と交響曲第五番。DGGから発売されている)。この演奏も堂々たる名演であるが、27日の演奏が落ち着いた風格の記念碑的な名演であるのに対し、25日盤は、まさしく歴史的瞬間のドキュメント、聴衆の感動の記録そのものである。