すべからく犯罪について語ろうと思う者この書に通ずべし!
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昨今の日本はやれ検挙率が低下した、少年犯罪が急増、凶悪化した、外国人犯罪が急増中といった言説が、枕詞のごとく既定事項のものとして扱われているが、その種のあたら「体感治安」の悪化しかもたらさない言説が実は作為的なものに過ぎないということを明らかにしている。
このように書くとさも陰謀論めいていて、隠されていた秘密資料が暴露されていると錯覚されるかもしれないが、徹頭徹尾、冷静な記述による学術書の域を決してでるものではない。そして、それだからこそ燦然と輝いているといえる。
巻末に公開資料の調べ方までも懇切丁寧に説明しているが、統計の基礎的知にプラスして、警察統計を俎上に統計にかける前のデータの在り方、作られ方について説明しているのみである。ただ単に事実がそうなっているという、ただそれだけのことしか示していないが、それだけに事実から遊離している巷に溢れる言説のいかがわしさが目に付くようになる。
マスコミや政治家をはじめとするそれらの言説が単に事実を知らないという無知によるものなのか、事実を知りながらもそう主張することで何か利得があるという無恥によるものなのかはこれを読んだ上で読者一人一人が各言説を監視することで辿り着くべき問題であろう。