Turandot
価格: ¥3,946
Joan Sutherland is not usually considered a Puccini singer, and in fact she sang the role of Turandot only in the recording studio. But for that assignment she had exactly what was needed: a voice that seemed to have no upper limits and a personality that concealed vulnerability under an air of icy detachment. She also had an ideal set of colleagues, notably Luciano Pavarotti, whose "Nessun dorma" has become practically his signature tune. --Joe McLellan
王道中の王道盤
★★★★★
「トゥーランドット」のキングオブキングならぬクイーンオブクイーン。
やる気に燃えたメータの棒はまさに真骨頂、後の紫禁城公演など比べ物にならないほど、迫力に溢れています。ちなみに、私はメータの盤で好きなものはこれ以外なにひとつないという人間です。その私が唯一好んだメータ盤です。
パヴァロッティも後の大道芸人ぶりとはうって変わって真摯です(でも「誰も寝てはならぬ」は、彼お得意の、後奏が始まってもまだフェルマータしたまんま、ってのは健在です)し、サザーランドの濃いトゥーランドットぶりは二人が当時デッカを代表する名コンビであったことを知らしめてくれます。特に第二幕の初登場シーンにおける二重唱の濃厚さはほかのCDでは聴くことができません、ここだけ幾度も聴き返してしまうほど。
当時のコロラトゥーラというのは現代とかなり異なっていて、特に彼女はディーヴァの名にふさわしくここでは堂々とドラマティックな役を歌いこなしているのです。
カバリエも充分すぎるほど健闘しており、2曲のアリアもリッチャレッリのような果敢なさではなく、可憐な女性の声を髣髴とさせる謡いっぷりで、彼女の容姿を巣像させません。
合唱も同時の最高の録音技術総動員で、実に朗々と響きます。
カラヤン盤を映画的と捕らえると、メータ盤は非常に舞台的といった感じです。
カラヤンがやや幻想的になってしまうところを、メータは現実主義、あくまでリアルに聴かせてくれるのです。しかし、その壮大さとまとまりのよさには文句のつけようがなく、まさにトゥーランドットのファースト&ベストチョイスにふさわしいという言葉に異論を唱える人はまずないでしょう。
オペラこそカタルシス
★★★★★
トゥーランドットの録音についてはたくさんの答案が世にでておりますが、数少ない正解がこの盤です。指揮は若き日のメータと、歌声はなんといってもパバロッティです。もうこの歌声がなければトゥーランドットは聴けません。何回聴いても勉強になります。このメータ盤はともかくやる気に満ちているんです。俺について来い、と言っているようです。絶対的な自信に満ちています。もう遣りまわしているといってよいでしょう。パン!と張っていて、活力に漲っています。合唱は全く一つの楽器のように完全にメータのコントロールに入っていて、オルガンのストップを換えるように正確に千変万化します。紫禁城でのコンサートもよいですが、これに勝るトゥーランドットは今のところないと言えましょう。第一幕の最後、Non piangere, Liu!から始まる圧倒的な第一幕フィナーレはプッチーニ畢生のオーケストレーションです。6人の独唱と合唱、大規模なオーケストラ、大河のような音楽をメータは最大限の感動をもって演奏しています。そして運命のドラは素晴らしい間をもって三回打ち鳴らされ、アー、これでこの男はこの世のものではなくなった、というものすごいカタルシス。このオペラにプッチーニは持てる力と技巧の全てを傾けたといってよいでしょう、従ってネッスンドルマも素晴らしいですが、こんな部分にこんなに凝らなくてもいいじゃないかというぐらいにどの部分も丁寧に筆が入っている素晴らしいオペラです。この名作をこの名盤でどうぞ。(2005.6.26)