一部要約
★★★★☆
セブン銀行が成功した理由の一つにATMの価格がある。通常の銀行のATMは1台1000万円以上して、無人店舗のATMは頑丈な構造が必要なので2千万円以上した。しかしセブン銀行のATMは、通帳機能がなく、小銭も扱わず、常に店員がそばにいるので、1台300万円程度である。
アメリカのレンタカー会社で最大手はハーツだが、業界第2位のエイビスでは、その地位を生かして奇策なキャッチコピーで宣伝した。「エイビスの車をお使い下さい。カウンターにお並びいただく列は、ずっと短くなっております」。つまり、業界最大手ではないので、「待たずにすぐにチェックインできる」という謳い文句にして、ハーツがマネできない作戦ととったのである。
1993年、エッソ石油では、他社のガソリンスタンドに対抗するために思い切った作戦に出た。それは「他社の現金カードを提示した客には、その場で値引きする」というものであった。
ハーバード大学教授のセオドア・レビット
「自社の事業を“物”ではなく、顧客に提供する“機能”として定義できれば、企業は新たな展開が可能になる。」
「顧客は4分の1インチ・ドリルを欲しているのでなく、4分の1インチの穴を欲しているのだ」
ハーバード大学のヘイデン・クリステンセン
「業界トップの座を守る唯一の方法は、完全に独立した組織を設立して、全く新しい事業を全く新しいビジネスモデルで構築する特権を与えることである。」
多彩な事例がわかりやすさをアシスト
★★★★★
限られた企業しか上り詰められない業界1位という地位。
その地位を引きずり落とすための、多くの企業にとって大いに参考になる事例・戦略が記されている。
1位のベストプラクティスを学ぶよりも、どのように1位に上り詰めるのか、1つ上の地位に上るのか(シェアに限るわけでない)のほうが多くのビジネスマンにとって有益であることを考えると、本書は読んで損しない1冊。
文字も大きくなく、事例がテンポ良く紹介されているので、本を手にとって感じる印象よりもスラスラと読めるのがよい(ハードカバーでなく、もう少し手ごろ感を出せばもっと売れそうなのに・・・)。
今すぐ使ってみたくなる分析フレームワーク
★★★★☆
一般に強みと弱みというのは表裏一体ではと思ったが、なるほど、本書を読んでみて「オセロ」のイメージがよくわかりました。オセロがパタパタとひっくり返るようにシェアが逆転していくロジックを著者は4象限の図を使って説明していますが、これを自分の会社にも当てはめて考えてみたくなった。この部分は非常にわかりやすいと思う。できれば、事例でもう少し細かい具体的な数字をあげてほしいと思ったが、これはこれで良いかとも思う。
実践的な競争戦略本
★★★★★
体力に勝るリーダー企業がトップの座から転落するのはどういう時か。
本書は、「リーダー企業が追随しにくい戦略を採用する」という問題意識に立って、リーダー企業を攻撃する際の戦略を、豊富な事例に基づいて明らかにしている。リーダー企業の存在がイメージできるのであれば、市場にいるほとんどの企業にとって有益な書である。もちろん、リーダー企業にとっては、自らが追い落とされないためにどのような成長戦略を練るか、という点で、本書から多くの示唆を得られるであろう。
事例をアップデートして存在し続ける本書のフレームワークは、時が経つにつれてその正当性を増しているように思う。