達意の訳文と長文の解説
★★★★★
まだ第一巻と第二巻を読んだだけですが、この訳でようやくカントの面白さがわかりました。
術語の言い換えについては賛否両論あるかもしれませんが、気になる方は本書を読んだあとで厳密な逐語訳、または原書か英訳を参照されるとよいと思います。
ちなみに帯文には、「もう入門書はいらない!」と書いてあって微笑を誘います。
なお、カントの認識論ではなく倫理学を読みたい方には、『道徳形而上学原論』(岩波文庫)をおすすめします。
カントが…
★☆☆☆☆
訳者のレベルに次元が下がってる
もはやカントではない
物凄い労作
★★★★★
この中山元による新訳は全部で七巻になるので今までに刊行されている『純粋理性批判』の翻訳に比べると非常に巻数が多いのですが、その理由はせこい出版社がよくやるような、行間を大きく開けて文字をでかくしてページ数を水増しして小銭を稼ごうという悪徳商法をしているのでは勿論なくて、巻末に書かれている解説が非常に多く、かつ充実しているからです。
翻訳の良し悪しを判断する能力は僕にはありませんのでそこには触れませんが、この本の素晴らしさは翻訳よりもむしろ中山元による解説にあると僕は思っています。というのも、僕のような初学者ではいくら訳が読みやすくなってもこのような大著は論理的な難しさのせいでどうしても途中でわからなくなってしまい、最後まで読みきれずに投げ出してしまうことが多かったのですが、この翻訳者は何と一段落ごとにカントの述べていることを要約してそこに注釈をし、かつ何の前知識もない人間でもわかるように噛み砕いて説明し直してくれているのです。
つまり、この本は『純粋理性批判』の最後に詳細な入門書がセットでついているようなものなのですが、一段落ごとに追ってくれているので本文を読んでからその解説を読み、また本文に戻るという読み方が可能になり非常に緻密にカントの論理を追うことが可能になっています。このようなスタイルの翻訳は今までに中山元以外はやっていなかったように思えますが、初学者がゼロから理解できるように工夫がなされているという一点だけを考えてもこの翻訳は素晴らしいと言えるでしょう。
仮に今後このスタイルの新訳が増えるとするならば哲学を学ぶための敷居はかなり低くなるでしょうし、そうなってくれたら僕も嬉しいのですが、翻訳者の仕事量の多さを考えるとそこまで期待するのはわがままが過ぎるのでしょうか? しかしこの中山元による翻訳を読むと、それを期待したくなってしまいます。
あの歌をもう一度〜ハルキファン集まれ!
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村上春樹さんの「1973年のピンボール」の主人公がカントの「純粋理性批判」を読んでるのがカッコいいので、岩波文庫を買った人は沢山いると思います。そしてそのまま放りだした人も沢山いると思います。ほとんどの人はそのまま放りだしたままだと思います。その時の人たち、今一度、ミーハーをやるつもりで、この中山さん訳の光文社文庫を手にとって見ましょう。救われます。
老子も道元も読みたい、源氏も徒然草も、ゲーテもスタンダールも、デカルトもヘーゲルも、タゴールもマルクスも、という知の戯れ人である現代の日本人にとって、そしてまた、やたらに忙しくて時間も無いが、知的好奇心の旺盛な方々にとって、このようなちゃんとした日本語でカントを読めることは望外の喜びです。私としては長生きしてよかった、と思います。
原文をお読みになるための対訳本も必要ですが、それだけで読める翻訳がもっと大事にされていいと思います。例えば言語的にドイツ語と親戚みたいな英語やフランス語では、はるかに詳細で丁寧な注釈付きの翻訳本が沢山(でもないか?ま、必要にして十分な、というか)出ているのですから。
時代が時代であれば、この訳本刊行などは「歴史的壮挙」と讃えられて当たり前の事なのですが、本屋に行って見るまで知りませんでした。
(-_-;) 予定通りに全巻刊行が成就されますよう、中山さんのご健康と光文社のご繁栄を、心からお祈り申し上げます。
読まずに死ねるか!
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中山元による画期的な「純粋理性批判」の新訳と解説本である。画期的というのはまさにこのような翻訳本のことをいうのであろう。この本の翻訳について、定説なるものを(そういうものが確立されていたらのことだが)をちょっと脇に置いた新しい「言葉使い」による新しいカント哲学の世界がここにはある。
自由な改行位置、小見出しの設定(これがなんとも読者にとってはありがたいのだ)のおかげで、難解なカント批判哲学を何とか読み進むことができる。しかしいくら新訳といっても、いくら読みやすくなったとはいえ、所詮、カントはカント、難しくないわけはない。すらすらと読み進むことができるわけがない。しかし、行きつ戻りつしつつ、第一巻目、なんとか読み終えることが出来た。そして、中山氏が「あとがき」で言っているように、「タイトルリスト」を作成するという「読み方」もなかなかいいような気がする。そして全部で七巻あるというのに、次の第二巻目が待ち遠しくなっているのだ。
いいタイミングでこの新訳が出てきた。そんなこんなで、読み出したのだが、この古典新訳文庫、お薦めしますよ。