渡辺は漫画の天才でもあった
★★★★★
死去後にあまれた「漫画ベスト版」で、560ページの大著。
赤瀬川源平と南伸坊の、実際のお葬式で読まれた弔辞。それから嵐山光三郎の追悼文と、「南伸坊、みうらじゅん、リリー・フランキー」による座談会がついている。
渡辺コラムの面白さは、十分に認識している私だが。
漫画のほうは、20代前半に、単行本を1冊くらい読んだのだが、当時は全然ピンとこなかった。(まあ、渡辺は生前に漫画の本は3冊しか出ていないのだが)
が、20年後の今、こうして、ドカンとまとめられたものを読み直してみると、素晴らしいこと、素晴らしいこと。傑作の嵐。
「現実体験そのまま」の漫画や、SF的な「奇想天外」漫画まであるが・・。どれも特有の「生々しいリアルさ」に満ち満ちている。
登場人物が、ヤンキーやバイク好き青年(=渡辺)であることが多いので、「文系の本好き少年」だった昔の自分には、駄目だったんだろう。
みうらじゅんや、根本敬の初期作品は、明らかに渡辺和博の影響を受けている。
「毒電波」という題名の、「電波から身を守るため」に、部屋中を覆っている人物が登場する作品まである。
巻末座談会(南伸坊、みうらじゅん、リリー・フランキー)でのみうらじゅんの発言によると、後輩から見ると「怖くて変な人」だったそうだ。みうらじゅんは初対面で「あなた皮かぶっているでしょ」と指摘され、しばらくして渡辺が著書『ホーケー文明のあけぼの』を刊行すると、表紙に長髪の男のイラストがあり、横に「みうら」と書かれていた、そうだ。
また、神足裕司は渡辺から五反田の町中で突然、「チンコ出したら! オレは平気だよ」と命令されたという。
相当変な人だったんだなあ。そういうことをされても、みうらも神足も、渡辺のことが好きだったという。