英米女流幻想小説のルーツを読む選集として
★★☆☆☆
19〜20世紀初頭の英米女流作家による幽霊小説の選集。解説によると、この時代に書かれた幽霊小説の7割が女性作家によるものだったという。その理由は、やはり選者達が指摘するように、鬱屈した社会的立場に置かれた女性作家達の想像力が自由に広げれる空間が小説世界に限られたということなのかもしれない。ただ、本書の場合、「ヴォーグ」「ハーパーズ・バザー」といった女性誌に掲載された大衆作品が多いこともあるせいか、読みやすい反面、文学的な深みには欠ける作品も多い。少女漫画誌掲載の読切怪奇漫画みたいなアイデア一発なお話が多いというか。
一方で、各作品に描きこまれている様々な女の情感は確かに女流作家ならではのものだが、情念が恐怖に直結するような構成にはなってない。怖さのツボが日本人と欧米人では違うということもあるが、ホラー小説というよりは女流幻想小説の古典を読むような感覚で手に取る本なのではなかろうか。(なお、ホラーらしい「怖さ」という点で言っても、全然怖くはない。このへんも古典っぽいというか。)英米女流文学を読み込んだファンや研究者向けの一冊。