肝心の協奏曲はベートーヴェンのピアノ協奏曲でも最高峰の一つだと言っていいだろう。だだし個人的には私はメータの押しの強い指揮ぶりには少し閉口するのだが・・・・・
しかし、そのメータの男性的なダイナミックな表現にもアシュケナージの力強い演奏は一歩も退くことなく、これを征し、且つデリケートな部分にいたってはこれほどまでに美しくベートーヴェンを歌い上げることが可能なのかと感動させられてしまう。
もう一人の名ピアニストにマウリィツオ・ポリーニがおりベートーヴェンの協奏曲演奏では君臨しているが、これは好対照のライバルであり、どちらが上とかそういう次元ではなく、この性格のまったく異なる二人のどちらもが真のベートーヴェンを表現し得ていると私は思う。
聞き比べるとゾクゾクします。
昔、ある大作曲家が自分の作品が二つの楽団でかなり違った解釈で演奏されたのを聴いたそうだが、その作曲家は「どちらも良ろしい。」と言ったそうだ。
最近、また昔の名演奏が再評価され売れているようであるが、ピアニストとしてのアシュケナージの存在はやはり傑出していると言わざるを得ない。
レコード・アカデミー大賞を獲得したアルバムとのことですが、そのような肩書きはもはやいらないでしょう。