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故郷はなぜ兵士を殺したか (角川選書)

価格: ¥1,890
カテゴリ: 単行本
ブランド: 角川学芸出版
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遺族は「故郷」で、泣いてはいけなかった ★★★★★
出征する若者が「郷土の名誉を汚さず」「御国のために死んで参ります」と勇ましい口上を述べる姿を、映画などで見たことはあるだろう。
そうやって送り出された前線の兵士に宛て、家族・子供たちから「他の兵隊に負けず手柄を立ててほしい」「天皇陛下のために命を捧げて下さい」といった手紙が届き、さらに過去の戦死者を奉る郷土の慰霊碑の写真や、出征時に撮った写真が届いていたことは知られていない。
それは兵士達に、武勲を挙げなければ郷土で家族の肩身が狭くなるのではと感じさせ、名誉の戦死を遂げず郷土に帰ることを許さない強い空気を作ったのだろうと本書は推理する。

「なぜ多くの兵士は勇敢に死んでいったのか」「遺族は身内の死をどのように受け入れてきたのか」。
国家や軍による支配の構造に著者は「故郷」を加えることで、若い兵士を順次死地に送る近代日本の戦争のシステムを解きほぐそうとする。
人はふつう国のために死ねない。家族も、国のために肉親の命を奪われる状況を受容できない。
どんな教育を受けようとも、家族、親族、そしてそれらを包みこむ地域という存在が、私達の生活の立脚点であり、その影響力を知る政府や自治体は「故郷」を積極的に戦争への動員に活用した。
ただ著者が再三主張するように、「兵士達は何のために死んだのか」「兵士の死は何に貢献したのか」、明確に説明した「故郷」はない。目的のわからないものに命を賭けさせるほど、戦前の「郷土」は人を拘束した。彼らは故郷を裏切って生きてはいけなかったのだろうと、今の私達にも想像できる。

「地域の絆を取り戻せ」「コミュニティを再生しよう」。そんな掛け声が昨今日本中から聞こえる。ただ私たちは、かつて地域の強い絆が若者を前線へ送り、郷土の互助精神が遺族に戦死を「名誉だ」と受容させてきた時代がそう遠くない過去であると知る程度に賢明でなければ、歴史は必ず繰り返すだろう。