本格的俳句・季語の勉強に
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口絵10枚のカラー写真しか、ビジュアルなものはなく、後はびっしり活字が詰まっている。それだけ本文内容例句・解説が充実していると受けとめたい。
季語には「解説」だけではなく、「考証」がある。この欄は季語の成立・変遷を明らかにするのが主眼である。既刊「図説俳句大歳時記」を踏襲、必要に応じて詳細に形成過程が提示されている。例えば「野遊び」の考証では「万葉集」巻十春雑に「野遊び」と題して「春日野の浅茅が上に思ふどち遊べるけふは…」の歌にまで遡っている。「春惜しむ」の考証では「和漢朗詠集」に「惜春」の題で初出とある。
例句は現在活躍中の俳人に及び、親近感が持てる。
母の家の裏戸親しや梅の花 寺井谷子
長靴はどこへも行けて水温む 茨木和生
少年に菫の咲ける秘密の場所 鷹羽狩行
をだまきの紫賤のものならず 後藤比奈夫
臍の緒を家のどこかに春惜しむ 矢島渚男
「図説大歳時記」に比べて持ち運びにもよく、コンパクトに瀟洒な歳時記に出来上がっている。〈春〉の巻は春らしく、桜色の装幀で、春の匂いが立つ。