京也のイメージが・・・。
★★★☆☆
魔界都市新宿のイメージが強いせいか、京也は颯爽とした好男児って印象があるのだが
騙し屋ジョニーを読んだ時もそうだったが、どうもそういう印象が薄れてきた作品だな。
菊池氏の最近のほかの作品と同じような陰湿さも感じられ。
もともとが朝日ソマラマのライトノベルから出発した作品だって感じがしない。
菊池氏らしい作品だって言えばそれまでだが。
どうも初期の作品にあったようなイメージがなくなったのは残念だ。
あとがきには、この魔界都市新宿シリーズは、京也とさやかの恋愛がメインだが
これまで恋愛が乏しかったから、この作品に入れたと書いていました。
作品の中で示された聖女のさやかちゃんの魅力を、この作品に出すと思ったけど
そんな感じもしなかったしな
せっかくの十六夜京也なのだから……。
★★★☆☆
十六夜京也シリーズ正編、第四弾。ファン待望の作品……なのですが、はっきり言って残念な出来です。
ファンが京也の物語に期待するものは何でしょう。はっきり言ってそれは「爽やかさ」だと思います。お調子者ながら、メフィストも認める快男児の京也が、怒り、悲しみながらも木刀『阿修羅』を振るい、その念法で、悪のみならず読者の心のモヤモヤさえも吹き飛ばす。そんな物語を、私は京也が主人公の作品には期待していました。
本作には悲劇的色彩が濃いですが、菊地秀行氏はどんな悲劇を描いても胸を温かくするラストを描くことの出来る作家です。ですから、それがこの作品の欠点につながっているわけではありません。
問題なのはキャラクターの書き込みです。今作で、本当の意味で活躍している登場人物は非常に少ない(さやかですら、ほぼ脇役です)。八城多恵やクィーン・エリザベス、水月豹馬の甥・豹爾、敵対する牙一族の面々……。実に魅力的な顔ぶれなのですが、人数が多すぎるためか、その書き込みが浅くなってしまっている。それが本当に惜しい(特に多恵とエリザベスには、きちんと会話をしてほしかった)。結果、彼らの存在感が薄れ、物語の感動自体も薄れてしまっているのです。
バックボーンに恋愛要素を取り入れたと聞けば、京也とさやかとの関係の進展を期待するでしょうが、それもなし。あくまで他の人物の動機となっているというだけです。これならば、京也ではなく、他のシリーズでも良かったのでは? そう感じられてしまうことが何より残念です。